新規開業、承継開業
「承継開業と新規開業」選択について
Ⅰ.はじめに
開業を考える先生にとって、新しい不動産を探していちから開業する「新規開業」か、親族や先輩医師、第三者医師が行ってきた診療所を承継して開業する「承継開業」にするかどうかは迷われる部分かと思われます。
今回は多くご質問をいただく「事業の成功見通しの立てやすさ」「初期費用」「スタッフ」から見た視点で解説してまいりますので、先生が選択されるお考えの一つとなれば幸いです。
Ⅱ.事業の成功見通しの立てやすさ
開業される先生が考えられるポイントの一つとして、開業した場所で患者さんが何人くらい来るのかという見通しは重要な点であると考えられます。見通しの立てやすさという点では過去にその場所で診療を行ってきた医師のデータを確認し患者数が多いことを確認してから承継できる点で承継開業のほうが安全と考えられますが、必ずしもそうとは言い切れないケースや、新規開業でも同じように見通しを立てられるケースもあります。
(1)収益の上がっていない承継診療所を引継ぎ事業拡大を目指す
(2)旧院長に患者さんを引き抜かれる
(3)廃院情報を確認し、近隣のテナントで開業する
(4)自身の勤務病院近くで開業する
Ⅲ.開業にかかる初期費用
開業のご相談をいただく中で、「承継開業と新規開業、費用が安く抑えられるのはどちら?」というご質問もよくございます。
新規開業の場合、30坪ほどのテナントで開業する場合、約5000万円ほどは必要になりますが、一方承継開業では譲渡価格が1000万円以下場合によっては無償譲渡という場合もございます。一見承継開業が安く見える場合でも、いざ開業してみると結果、新規開業するよりも費用がかかってしまうこともございます。
(1)内装の解体・再構築費用
(2)医療機器の処分費用
(3)紙カルテから電子カルテへの移行費用
(4)広告費用
(5)承継にかかる諸経費
Ⅳ.開業する場合のスタッフ
新規開業の場合はいちから先生ご自身で採用するのは勿論ですが、承継開業では現状のスタッフを継続雇用できることはメリットとしてお考えになる先生は多いと思いますが、こちらも慎重に検討をする必要がございます。
スタッフを承継する場合のメリット
(1)看護師や理学療法士など専門職のスタッフを引き継げる
(2)既存スタッフの診療ノウハウをそのまま引き継ぐのでオペレーション研修は不要
(3)既存スタッフと患者さんが顔見知りで、安心して継続来院が見込める
スタッフを承継する場合のデメリット
(1)定期昇給によって、人件費が高騰している
(2)退職金の支払いを引き継ぐ先生に求めている時
(3)就業規則やルール違反など違法行為がある場合
(4)電子カルテ導入や新しいオペレーションに馴染めず、固まった考えを持っている
Ⅴ.おわりに
上記のように既存診療を引き継ぐことで享受できる様々なメリットはもちろん、見えないリスクは案件ごとに異なります。新規開業、承継開業のどちらかを選択する際にはタイミングや先生ご自身の価値観を確認することが大きく関わってきますので、様々な視点から一緒に検討できるコンサルタントにご相談してみてはいかがでしょうか。
執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)
(株)G.C FACTORY 代表取締役
経歴:
国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。
実績・経験:
・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験
・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任
・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任