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事例集

新規開業事例

”患者さんを断らない”安定した在宅医療の供給の為、同じ志をもつ仲間と理想を追求し続けるクリニック

クリニック概要
院長名 清山 知憲(きよやま とものり)先生
クリニック名 医療法人社団ひなた ひなた在宅クリニック
クリニックHP  https://kiyoyama.jp/
コンセプト 患者さんとご家族が自分らしく、安心して生活ができる地域
所在地 (宮崎院)
 〒880-0002 宮崎県宮崎市中央通3-51-2F
(東京院)
 〒140-0013 東京都品川区南大井6-24-6 DAITOビル3階
アクセス 宮崎院:JR【宮崎駅】から徒歩13分
東京院:JR【大森駅】から徒歩2分 / 京浜急行電鉄【大森海岸駅】から徒歩8分
診療科目 宮崎院:訪問診療(内科、小児科、皮膚科、糖尿病内科、精神科)
東京院:訪問診療(内科、精神科)

 

Ⅰ. まえがき

今回は、医療法人社団ひなたの理事長であり、宮崎市長でもある清山知憲先生に、弊社の金子がインタビューをさせていただきました。

 

沖縄県立中部病院の研修医時代のことや、ひなた在宅クリニック開業の経緯、東京と宮崎と離れた2院の運営手法、そして宮崎市長の業務との両立など、清山先生からしかお聞き出来ない話が盛りだくさんです。開業や分院展開を検討されている多くの先生のご参考にいただければ幸いです。

 

Ⅱ. 清山先生個人について

Q1:医師を目指したきっかけ

金子:
本日はよろしくお願いします。最初に医師になろうと思ったきっかけから教えてください。

 

清山先生:
よろしくお願いします。医師になろうと思ったきっかけは、大好きな祖母を自分で診てあげたいと思ったからですね。なので小学校低学年の頃から自然と医師を目指していました。

 

金子:
それは素敵ですね。ということは、小学生のころから必死に勉強していたのですか。

 

清山先生:
いえ、そのころは医師になるためには、たくさん勉強しないといけないことを知らなかったので遊びまくっていました(笑)高校時代からはスイッチが入って、誰よりも勉強したのではないかというくらい勉強しましたね。

 

Q2:開業の経緯

金子:
念願の医師になられて、開業を志した経緯を教えてください。

 

 

清山先生:
一言で言うと、「自分の働き方を自分で決めたかった」からです。

もう少し詳しく話すと、県議会議員を務めた後の、最初の宮崎市長選挙(1回目は次点で惜しくも落選)が終わってから、色々と考えて、最初は勤務医として働くことも考えて、求人サイトに登録したりもしました。ただ、私は病院などの大きな組織の中で勤務医として型にはまった働き方をするよりも、自分がやりたい医療を自分自身の考え方や方法で患者さんに提供する方が向いていると思い、そのためには開業が一番と考えるようになりました。そして、親友を介して、金子さん(株式会社G.C FACTORY 代表)を紹介してもらったという経緯ですね。

 

Q3:訪問診療を選んだ理由

金子:
開業するクリニックの診療内容として「訪問診療」を選んだのはなぜですか。

 

清山先生:
元々、高額な医療機器を用いた専門的な医療というより、医師としての腕一つで患者さんの役に立てるような医療がしたいと思っていたからです。

これは研修医時代の研修先である中部病院(沖縄県立中部病院)で、問診・身体診察を徹底的に行うことを教育されてきたことがきっかけです。

聴診器一本で患者さんの病態を言い当てるという、結構アナログな医療技術に魅せられていました。そういった経験から、自宅からなかなか出られない患者さんに医師が訪問して、診察・診断をして、最善の治療・ケアを届ける在宅医療に惹きつけられました。

 

 

金子:
研修時代の経験が、訪問診療との親和性が高かったのですね。

 

清山先生:
そうですね、中部病院って「いかに最初の問診で、患者さんから徹底的に話を聞いて、身体診察もしっかりやって、そこで自分なりに診断をつける」ということを教育されるので、その辺を疎かにして、簡単に高額な検査などをやろうとすると、厳しく指導を受けるんですよ。「なんでCT撮るの?」「疑ってる診断は何?」と。

 

金子:
私が思っていた一般的な病院のイメージと全然違いますね。より点数を取れるように考えるのでは無いのですね。

 

清山先生:
はい。これは徹底されていて、血液検査の項目一つでもすごく叱られてました。それで考えるようになりますよね。検査一つ、薬一つ出すにしても。この中部病院の問診と身体診察中心とした、古き良き医療を大事にする診療スタイルが、在宅医療や総合診療とは親和性が非常に高いと思います。

手段が限られてる施設や自宅という現場で、自分の問診と身体診察が頼りの中でいかに最適解を出すかに心を砕くというか、努力するのが非常に面白いです。

 

金子:
山王院の院長である田代先生も同じく中部病院で研修をされていますよね。

 

清山先生:
はい、田代院長も私と同じく中部病院で問診と身体診察を徹底する臨床教育を受けてきています。当然、東京の在宅医療の現場でも活きていますし、何より田代院長もよく言っている、「患者さんを断らない」が両院共通のポリシーとして徹底できています。

 

Q4:宮崎市長選挙の出馬について

金子:
清山先生は宮崎市長でもいらっしゃいますが、開業後に宮崎市長選に出馬しようと思ったきっかけを教えてください。

 

清山先生:
本来、医療法人の業務に集中するのが、法人運営の面ではベストですが、、そこは私個人の今までの経緯(県議会議員を務めてきたことや、一度宮崎市長選に出馬したこと)や、地域の皆様の将来を案ずる声を聞く中で、私自身も自分にしかやれない仕事をここで逃げて良いのかという責任感がありました。

患者さん、法人のスタッフ、市民の皆さんのことを考えて、悩んだ末に院長やスタッフに相談をしたのですが、幸い田代院長をはじめ、スタッフみんなが理解し、応援してくれたので、私は私にしかできない仕事をさせていただく決断をしました。

※清山理事長は、宮崎市の市長としてもご活躍されていらっしゃいます。

 

Ⅲ. 医療法人社団ひなた ひなた在宅クリニックについて

Q1:医療法人社団ひなた ひなた在宅クリニックの特徴や強み

金子:
次に医療法人社団ひなたの強みや特徴を教えてください。

 

清山先生:
強みは、先程お話しした、法人として「患者さんを断らない」というポリシーを徹底できているところです。私や田代院長は中部病院時代に患者さんをやむを得ず断ったり、他にお願いするということのほとんどない、まれな環境で育ったので、今でも困難なケースが来ると逆に燃えてきます。

 

金子:
お二人が同じ理念を共有できているのがすごいです。これはひなたの若い先生方にも伝えているのですか。

 

清山先生:
そうですね。そういった理念や考えを理解して取り組んでほしいと思っています。

※宮崎院の朝のカンファレンスの様子

 

Q2:宮崎市長と医療法人の理事長の両立

金子:
宮崎市長と宮崎・東京にクリニックを持つ医療法人の理事長を両立するためのコツはありますか。

 

清山先生:
第一は、市長と法人の理事長を両立している私のことを各院の院長や職員が広い心で理解してくれていることが大きいです。私はどうしても現場にいられないこともあるので院長や職員の皆さんの理解がなければ難しかったと思います。

また、宮崎院の開業当初からずっと裏方支援してくれているG.C FACTORYのおかげでもあります。G.C FACTORYはこれまでもずっと東京からリモート支援をしてくれていたので、バックオフィスなどの面においては、私の居場所が宮崎のクリニックから市役所に変わったところで大きな違いは無く、安定した支援をしてくれています。

 

金子:
そう言ってくださり、ありがとうございます。東京院のスタッフには定期的に会えない中、コミュニケーションはどうしていますか。

 

清山先生:
少なくとも院長や総務のメンバーとはほぼ毎日slack(ビジネス向けコミュニケーションツール)でやり取りをしています。加えて月に1、2回東京に行く機会があるのでその時に出来るだけクリニックに顔を出すようにしています。ただ、現場のマネジメントとしては十分ではなく、宮崎、東京それぞれで院長が頑張ってくれています。

 

Q3:東京院院長の田代先生について

金子:
田代先生との出会いを教えてください。

 

清山先生:
田代院長との出会いは、私が宮崎大学で講義をしていた際に田代院長が医学生として受講していた時です。当時、彼は大学3年生で私の活動に興味を持ってくれており、最初の県議会議員選挙あたりから一緒に地方を回るなど手伝ってくれていました。その後、県議になった後も勉強会に誘うなど連絡を取っていて、彼が卒業する際には、私が中部病院を研修先に勧めたという繋がりです。

 

金子:
そんなにも長いお付き合いなのですね。院長を打診したきっかけを教えてください。

 

清山先生:
山王院の院長になった経緯は、田代先生は中部病院での研修後も沖縄県の病院に勤めており、医師として5年目だったので、「今後どうするのかな」と思っていました。そして東京院の院長を打診したところ、二つ返事で「やります」と言ってくれました。

 

金子:
沖縄からですよね。すごい行動力ですね。

 

清山先生:
現場のマネジメントをカバーできているのも、田代院長が私と同じ価値観で非常に熱い思いで頑張ってくれているからなので、恐らく他の先生だったら難しかったと思います。

※山王院院長の田代先生です。

 

Q4:今後の取り組みについて

金子:
法人として、今後どのようなことに挑戦していきたいですか。

 

清山先生:
今まで通り、宮崎、東京の両院が安定して良い医療を提供していければ良いと思っています。挑戦と言うと、分院展開などがありますが、以前から拠点を分散することはあまり考えていなく、複数の医師が一か所で勤務をして、お互いに高め合うことが理想だと思っています。様々な医師が集まることで専門性にも幅が出ますし、患者さんへの対応にも機動力が生まれ安定感にも繋がります。安定的に質の高い医療を提供するためにどんな体制が理想かということを追求していきたいですね。

 

金子:
今後も宮崎院と東京院の2院を発展させていくということですね。

 

清山先生:
現在は集患対策などを必死に頑張っているというより、「相談のある患者さんは全員お世話させてもらいたい」というポリシーを愚直に実現していった結果、ここまで患者さんが増えてきていますので、それを続けていければと思っています。(現在両院合わせて1000名を超える管理患者数)

 

 

Ⅳ. 開業について

Q1:訪問診療の東京(都会)と宮崎(地方)における利点、難点について

金子:
訪問診療のクリニックを運営するにあたり、地域に寄って利点や難点が異なると思いますが、まずは宮崎院について教えてください。

 

清山先生:
地方の利点は、やはり競合が少ないことですね。開業した際に患者さんを紹介してもらいやすいですし、他職種との連携に置いても、医療機関として尊重されやすいと思います。

難点としては、他職種の方が既存の医療機関と深い関係性を築いていることもあるので、そういった場合は配慮が必要になる点でしょうか。

ちなみに、宮崎市などよりさらに地方となると、在宅クリニック自体がほとんど無かったりして、存在自体を感謝されるようになると思うのですが、そういうところでは訪看などのリソースが乏しいなど、別の苦労があると思います。

 

金子:
なるほどです。東京院はいかがですか。

 

清山先生:
東京(都市部)は、苦労したのは、競合クリニックが多い分、ケアマネジャーが紹介先の医療機関を「選ぶ」立場になります。山王院開業の際には院長と一緒に挨拶回りに力を入れていました。

利点は、ケアマネジャーなどの他職種から一度高い評価を得ることができれば、他の医療機関との関係性などに影響されずに、多くの患者さんを紹介されやすい環境というところでしょうか。

 

Q2:集患方法について

金子:
患者さんを増やすための方法が東京と宮崎では違うということですね。

 

清山先生:
はい、アプローチ方法も多少異なると思います。地方(宮崎院)の場合は、患者さん直接というよりも他職種や他の医療機関、施設との関係性が集患において非常に重要で、信頼を積み重ねていくことが必要だと思います。

都市部(東京院)では、地方と同じく他職種が重要なことに変わりはないですが、患者さんやご家族からの口コミなどの直接の評価も上げる努力をして「選んでいただく」ことで依頼が増えることに繋がると思います。

 

Q3:東京院の移転について

金子:
東京院は最初、マンションの一室で開業して、その後今の場所(事務所)に移転をしていますが、移転の際の留意点はありますか。

 

清山先生:
留意点は2つあります。移転先は出来れば元の場所から半径2km以内で探すこと(そうでないと、保険診療の継続ができなくなる)と、医療法人の場合は定款変更が必要なことです。医療法人の場合はクリニックの移転にも定款変更が必要でそれが煩雑な為、手続きに慣れた専門家と組むことをお勧めします。

当院の場合、手続きは比較的スムーズに進みましたが、移転により行政区が変わったので所属医師会を異動しなければならない可能性が浮上し、その調整には苦労しました。

※移転後の山王院のオフィスの写真です。移転後まだ2年ほどですが既にだいぶ満席です。

 

金子:
開業時のテナントとして、マンションであったことは正解でしたか。

 

清山先生:
はい、移転の苦労があったとしても正解だったと思います。最初から大きく構えても成功するかわかりませんので。私の場合はまずマンションで始めて、事業を見極めて、「これは大丈夫そうだな」となってから、家賃負担のあるところに移転するようにしました。開業してから約2年で移転し、既に今のところも満席に近いので、約2年毎のペースで移転になりそうですね。

 

Q4:開業を検討している先生へのアドバイス

金子:
最後に訪問診療で開業を考えている先生に、アドバイスをいただけないでしょうか。

 

清山先生:
訪問診療は単価が高く、軌道に乗ると利益が出やすい診療内容ですが、医療というのは安定性が必要なので、そこで目先の利益に囚われないで、組織の安定に向けた投資をすることを開業時から意識していくことが重要だと考えています。

また、理念も重要だと思います。法人として地域に対してどんな役割を担っていくのか。大きなビジョンが無ければ職員の皆さんも5年、10年と継続して勤務していく中でモチベーションも保てなくなると思います。

山登りをしていたとして、山頂が示されておらずひたすら淡々と登っていくだけでは疲れて心が折れてしまいます。それがどの組織だとしても、「我々はこの山頂を目指して登っていくんだ」ということを示すのがリーダーでは無いかなと日頃考えています。

 

金子:
大変参考になりました。本日はありがとうございました。

以上

 


清山 知憲(きよやま とものり)

医師/総合内科専門医/医師会認定産業医/ECFMG Certificate

宮崎市長(29代)

経歴:

宮崎市生まれ。東京大学医学部卒業後、沖縄県立中部病院とアメリカのベスイスラエルメディカルセンターで内科研修に従事し、2009年に宮崎大学医学部第三内科に入局。2011年に宮崎県議会議員に当選。2018年に宮崎市にて在宅診療を専門とするきよやまクリニックを開院。2019年に医療法人社団ひなたを設立。2020年にひなた在宅クリニックに改称、東京都内に分院としてひなた在宅クリニック山王院を開院。2022年2月に宮崎県宮崎市長に就任。