事例集

新規開業事例

開業6年で、11院の展開と100万件以上の診療実績。
それを支える徹底した‘‘クオリティコントロール‘‘と医学研究への想い
クリニックフォアグループ 村丘先生インタビュー

 

Ⅰ. まえがき

今回は、クリニックフォアグループの会長である、村丘寛和先生にお話をお聞きしました。クリニックフォアグループは、真のプライマリ・ケア×患者ファーストのクリニックとして、2018年に田町院を開設して以来、2024年2月現在、11院を展開し、延べ100万人以上の診療実績を有しているグループです。

 

「平日夜間・土日の診療」、「駅直結or駅徒歩1分」、「WEB問診」、「予約システム」、「オンライン」、「院内処方」など患者さんの利便性の追求を徹底しており、Googleの口コミでもほとんどの院で「4」を超えています。(2024年2月現在、1院目の田町院は4300件を超える評価で、平均4.7を獲得)また、新型コロナウイルス蔓延時にはクリニックとしてはいち早くPCR検査や発熱外来に取り組まれた挑戦でも有名です。

 

このクリニックフォアを築いてこられた村丘先生に、学生時代のことから、クリニックフォアを開業に至った経緯、高品質のクリニックを築くポイントなどをお伺いしました。これから開業を考える先生や、既に開業をしていて、今後分院展開などを考えている先生方、是非ともご参考ください。

 

Ⅱ. グループ概要

グループ概要
院長名 村丘 寛和(むらおか ひろかず)先生
グループ名 CLINIC FOR(クリニックフォア)
クリニックHP https://www.clinicfor.life/
コンセプト すぐ診てほしい、いつも診てほしい人のための街のスマートクリニック
所在地 (クリニックフォア田町)
東京都港区芝浦3-1-32 なぎさテラス
(クリニックフォア新橋)
東京都港区新橋1-4-5 ヒューリックG10ビル 9F
(クリニックフォア飯田橋)
東京都千代田区富士見2-7-1飯田橋プラーノ 1F
(クリニックフォア有楽町)
東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町駅前ビルイトシアプラザ 地下1F
(クリニックフォア大手町)
東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi One 地下1F
(クリニックフォア四谷)
東京都新宿区四谷1-6-1 CO・MO・RE Mall 2F
(クリニックフォア心斎橋)
大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO 10F
(クリニックフォア大宮)
埼玉県さいたま市大宮区大門町二丁目118番地 大宮門街4F
(クリニックフォア池袋)
東京都豊島区南池袋1丁目27番10号 油木第一ビル 2F / 3F
(クリニックフォア渋谷)
東京都渋谷区道玄坂1丁目3-3 楠本ビル 2F(&3F)
(クリニックフォア亀戸)
東京都江東区亀戸6-58-13 亀戸S&Sビル5階
アクセス クリニックフォア田町:【田町駅】直結徒歩0分
クリニックフォア新橋:【新橋銀座口】徒歩1分
クリニックフォア飯田橋:【飯田橋駅】徒歩1分
クリニックフォア有楽町:【有楽町駅】【銀座駅】直結徒歩0分、【日比谷駅】徒歩5分
クリニックフォア大手町:【大手町駅】直結徒歩0分
クリニックフォア四谷:【四ツ谷駅】徒歩1分
クリニックフォア心斎橋:【心斎橋駅】直結徒歩0分
クリニックフォア大宮:【大宮駅東口】徒歩2分
クリニックフォア池袋:【池袋駅東口】徒歩1分
クリニックフォア渋谷:【渋谷駅南改札西口】徒歩1分
クリニックフォア亀戸:【亀戸駅東口】徒歩1分
診療科目 内科一般、皮膚科、アレルギー科、美容皮膚科

 

Ⅲ. インタビュー

 

Q1:医師を志した理由ときっかけ

金子:
本日はよろしくお願いいたします。最初に、村丘先生が医師を志した理由やきっかけを教えてください。

 

村丘先生:
中学・高校時代から、学んだことについて筋道を立てて人に説明することが結構得意で、自分にはそういった仕事が向いているなと思っていました。

その強みを活かせる職業は何かと考えた時に、学校の先生か医師かなと。当時の見識だとそれくらいしか思い浮かばず、、、(笑)

どちらに進むか迷ったのですが、医学部に入っておけば、将来の進路としてはより広い選択肢が確保できるかなと思い、そちらを選択しました。

 

金子:
大学を卒業されてから大学院に進まれたと思いますが、その意志決定はどのようにされましたか?

 

村丘先生:

中学・高校時代から生物学がとても好きで、学業としても得意でしたので、基礎医学の研究は当初からしたいと思っていました。究極、ノーベル賞などを目指して、医学研究にコミットメント出来たら良いなと思っていましたので、大学院に進学するのは自分の中では既定路線でした。

 

逆に、大学院には行くと決めていたので、初期研修はあえて大学ではないところに行こうと思い、地元の中規模病院で大学とは全く違う世界観で初期研修をしました。初期研修を終えて大学に戻ってから、早々に入局と大学院入学を決めた形になります。

 

 

Q2:腎臓内科を目指した理由

金子:
最初から決めていたのですね。ちなみに数ある診療科目で、腎臓内科に決めた理由を教えてください。

 

村丘先生:

はい。私の原点として生物学、ひいては人体の仕組みや病気のメカニズムなど全般に興味がありました。なので、本来は「この科ではないと駄目」ということは無く、根本的には、総合診療志向だったのです。

ただ、当時進路を決める段階では、まだ総合診療科のプレゼンスが高くありませんでした。そうなると、必然的に外科系というよりは、内科志望となります。

当然、内科の中にも色々ありますが、例えば循環器はカテーテル、消化器は内視鏡といったように、スペシャリストとしてのイメージが強く、内科各科の中では一番総合診療的な色を持っているのが腎臓内科かなと考え、選択しました。

 

また、当時の慶応義塾大学は、「内科ローテーション」と言って、一度「内科」と決めてから、内科の各科を回るシステムがあったのですが、そこでの一通りの経験でも、腎臓内科は、「腎臓だけを診る」というよりも、より幅広く、ベースとして「内科」であることを大切にしている医師が多いと感じていました。

 

Q3:開業後に方向性が変化したきっかけ

金子:
大学院で基礎研究をされていた頃と、現在のクリニック開業は、方向性が異なるように感じますが、方向を変えるに至ったきっかけがあれば教えてください。

 

村丘先生:

はい、先程の通り、極論「ノーベル賞を目指せるくらい」のわくわくする基礎研究、医学研究、生物研究に従事できたらなと思って、大学院に入り、実際に学位まで取らせていただきました。

しかし、いざ研究の道に入ってみると、なかなかイメージ通りにいかない部分が多かったです。空振りする確率が99%でも、1%の確率でホームランを打てるかもしれないという研究、例えばiPS細胞の山中先生も、最初は皆に「無理だ」と言われていたそうですが、そういったテーマこそが一番チャレンジングなノーベル賞級の研究テーマということになるわけですが、現実はそういった研究にはなかなか手出しできないのです。

 

「来年の科研費を獲得するためには今年の成果を何かしら学会に出さなくてはいけない」という生態系の中で、10年間成果がでないかもしれないような研究は、リスクが高すぎるとみられてしまいます。すると、取り組める研究のテーマはどうしてもスケールが小さなものになりがちです。

 

失敗リスクや反対を押し切って酔狂に挑戦して、大ホームランを打って素晴らしい研究者になる方も稀には存在しますが、それは本当に砂金のような存在なんですね。

そこを目指すのであれば、まずはアカデミアのポスト獲得を目指し、教授になってから自分の裁量で大がかりな研究をする、、という長期コースで考えなければなりません。それにかかる時間は、10年、20年、、と考えた時、「その頃には気力は残っているのかな」と感じてしまい、「ちょっと待っていられない。もう少し、ファーストトラックを走りたい」と思うようになりました。

 

研究をなかなか自由にできない理由は、詰まるところ、それがお金に紐づいているからです。税金を使って研究をさせてもらうからこそ、どうしても縛りが大きくなってしまうし、大ナタをふるえるほどの予算を獲得するには、長い臥薪嘗胆の期間が必要になってきます。

簡単に言うと、「お金がないと始まらないな」と感じたのです。お金があれば誰にも迷惑をかけずに自由に研究ができます。レベルが全く違う話ですが、実際にMetaの最高経営責任者のマーク・ザッカーバーグは、30億ドル以上を自分の関心のある医学研究領域に寄付して研究を促進しているというニュースがありました。究極的には、これが最強のやり方なんだと思います。

 

もちろんそこまでは現実には難しいですが、もう少し小規模で、例えば、年間数千万円を拠出する形で研究講座を作ることは現実的に可能だろうと考えました。

アカデミアの中をゆっくりとよじ登っていくというよりは、「本当に自分がわくわくできる研究テーマに戻ってくるために」、実業路線にいったん舵を切って、何にも紐づかない自分自身の潤沢な資金を作ろうと思ったわけです。

潤沢な資金ができたら、それをアカデミックな活動に還元しに戻ってくる、ということが遠大な裏目標なのです。

 

金子:
それで大学院を出てから開業を志すようになったのですね。

では、その後、臨床医として勤務をする中で、ご自身の考えに影響を与えた職場や人物はいますか?

 

村丘先生:

難しい質問ですね。実際のところ、特定の誰か、ということはなく、全ての職場と全ての先輩方、皆様を参考にさせていただいています。

皆、良いところも悪いところもそれぞれ持っていて、当然良い傾向の先生や悪い傾向の先生もいましたが、何事も功罪あるので、良い面は参考にして、悪い面は反面教師にするように考えています。

 

 

Q4:事前に身に付けておくべきスキルや準備について

金子:
素晴らしいですね。では、実際に開業をしようと考えてから、事前に身に付けておこうと思ったスキルや準備などはありますか?

 

村丘先生:
外来クリニックで開業をすることに関しては、それなりに自信があったので、、(笑)それに向けて特別な準備などは考えていませんでした。

ですので、教科書的な回答にはなりますが、意識していたのは「診療のスピード」ですね。診療の質を落とさないまま、スピードを保つためにどう工夫するかというところは、大事にしていました。

 

日本の医療教育では、外来診療のスキルを訓練する場や、チェックを受ける場がほとんどなくて、他の先生の診療を目で見て盗む程度しかできない中で、ある時からいきなり現場に出ることが多いので、フィードバックをもらうこともなく、「それじゃあ、全然成り立っていませんよ」というレベルでやり続けている医師も結構います。

 

手厚く時間をかけて診療することは、局所的には患者さんを満足させることはできるかもしれませんが、待ち時間が長いと全体としての患者さんの満足度は下がってしまいますし、スタッフからの評価も下がってしまいます。

一方で、診療はスピーディーだけれど粗悪というパターンもあるので、そこの折衷点となるような、患者さんからは「あの先生は良い対応をしてくれた」と言ってもらえて、スタッフからは「あの先生は診療が早く、患者さんを待たせない。仕事が早く終わる」と言ってもらえるような、「関わる人の総和」としての満足度が高い診療をするには、かなり高いスキルが必要になります。

これは、日々、漫然と診療していても身に付かない技術なので、何を改善すれば質を落とさずにスピードを高められるのかということを、早い段階から自分自身で意識しながら行うことが大事だと思います。

 

人から教えてもらう機会が少ない分、「昨日の自分より今日の自分は何が上手になったかな」ということを意識して、外来で診療のトレーニングを積んでいただくと、開業に役立つのではないかと思います。

 

金子:
「昨日の自分より、」というのは素敵な言葉ですね。

他の分院展開をされている先生は、理事長ご自身はできていても、他の先生を雇う際にそうはいかずに苦労されていることが多いです。

クリニックフォアでは、雇った先生にその方法を教えているのですか。それとも面接から見抜いているのでしょうか。

 

村丘先生:
まずは、面接前の応募の段階で、ある程度はセレクションをかけます。

私たちの診療の質やスピードは、開業から5年間続けてきて確立されてきています。おかげさまで認知もされてきていまして、応募の段階で診療スタイルを理解してもらえているため、診療方針が自分には合っていないと思う方は、そもそも応募してこないという流れができているように感じます。

もちろんその上で、診療技術に関する学習機会の提供であったり、フィードバックといったりしたものは平素より欠かさないようにしています。

 

金子:
なるほど。ブランディングがすでに出来上がっているということですね。

 

村丘先生:
そうですね。なので、「自分はここに適応できそうだ。そして、活躍できそうだ」と考えて、応募してくれる人が多いです。年々良い先生から応募をいただける確率が高くなってきている気がします。

 

金子:
なるほど。クリニックのコンセプトがしっかり確立しているからこそ、採用のヒット率が高いのですね。

これから開業を考えているような先生から応募いただくことも多いですか?

 

村丘先生:
はい、将来的に開業意欲のある先生からの応募も、しばしばあります。

近年は下手に開業すると失敗してしまうリスクもあるので、事前にオペレーションや、経営の方法を学びたいという人も増えています。こちら側としても、それは快く受け入れて、独立される際にも、基本的には応援的な立場で送り出すようにしています。

 

金子:
実際に貴院での経験を経てから開業して、成功されている先生も多いですよね。

では、コメディカルのスタッフさんでは、採用時に気を付けている点はありますか?

 

村丘先生:
コメディカルのスタッフにとっては、きちんと定時で終われるという点では「ホワイト」な職場であり、一方で、勤務時間内の業務内容に関していえば、日本で一番「アクティブ」な職場だと思います。

なので、のんびりとした働き方を期待している場合は、お互いにとって良い結果にならないので、「ここでは学んでもらうことは非常に幅広く、働き方もとてもアクティブです」ということを事前に十分に伝えさせていただいています。

 

「だからこそ働きたい」と言ってくれる方も多く、例えば「病院勤務は体力的に辛くなってきたけれど、まだまだ医療従事者としての矜持を持ってアクティブに働きたい」など、そのような想いを持った人の採用を心掛けています。


クリニックフォア新橋の内装写真。クリニックフォアは利便性が高いだけでなく、とても清潔感があり、患者さんの動線にもこだわられた院内です

出典:https://www.clinicfor.life/shimbashi/

 

Q5:開業当初と現在のギャップについて

金子:
開業当初に計画を立てて、思い描いていたことが様々あると思うのですが、現在まででギャップを感じたことはありますか?

 

村丘先生:
ここまでは、概ね思った通りに来ていますね。強いて言えば、多角的なやり方が必ずしも正しいとは限らないということには注意が必要かなと思っています。

私たちは、内科・アレルギー科に加えて、皮膚科・美容皮膚科など幅広く診療を展開していますが、この診療範囲の広さを維持するのは、やはりそれ相応に大変です。私たちはそれを一生懸命やっていますが、普通に開業しようと考えた時に同じことをやろうと思うのであれば、相当な覚悟と資質が必要です。

一方で、狭小な専門性を尖らせ過ぎるのも診療所の経営という観点ではなかなか厳しいのも実情なので、強み自体は、ある程度広く持っていないといけません。事業が空中分解しない範囲を見極めつつ、ギリギリ許容できる多角的な横の広げ方を見つけることが大事だと思いますし、そのバランスを常に取っていくことが大切だと思います。

 

Q6:訪問診療の立ち上げについて

金子:
素晴らしいですね。多角的といえば、クリニックフォアでは最近、訪問診療を立ち上げたと思います。外来診療の立ち上げと比べて、訪問診療の立ち上げで難しいと感じた点はありますか?

 

村丘先生:
患者さんに認知をいただくという面において訪問診療の方が難しいと感じています。

外来の場合、開院をすれば一定数の患者さんの流入が自然に発生します。もちろん、立ち上がりが緩やかな場合や急速な場合というのは立地条件によってもありますが、基本的には一定数はいらっしゃる患者さんに対して、医師の診療の腕が良く、スタッフの対応も良ければ、自然と患者さんはリピーターになってくれますし、口コミや評判を広めてくださるので、そういう面を意識して質の高い診療に励めば、外来の売上は伸びるはず、という感覚があります。

 

一方、訪問診療は、仮に診療の質が高かったとしても、まず「存在を知ってもらわないと始まらない」という大きなハードルがあります。

「訪問診療を始めました」という情報をケアマネさんや高次医療機関の連携室、一つひとつに情報提供をしてからがスタートになります。なので、実際に患者さんをご紹介いただける流れが立ち上がってくるまでには時間と労力がかかる印象です。

 

金子:
本当にそうですね。

クリニックフォアが訪問診療を始めた意義はどういったところにありますか?

 

村丘先生:
私たちは2018年の開院以来、現役就労世代にとって便利なコンビニ型診療所として、都心部の駅に近い立地で、仕事帰りや土日祝日に気軽に受診できることをコンセプトにしてきました。

それをご評価いただいていますが、実際、患者さんのほとんどが現役就労世代であり、70代以上の患者さんは全体の2%程度に留まっています。外来の医療機関としては、十分高く評価していただいていますが、いわゆる一次医療機関としての役割を考えた時に、ご高齢の方をしっかりケアのターゲットとしていくには何ができるのかと考え、訪問診療を始めることにしました。

 

この数年間はコロナ禍でずっと忙しく、私たちは恐らく日本で1番発熱患者さんの診療をしてきたのですが、最近はようやくコロナ禍が明けてきて、このタイミングでいよいよ訪問診療をスタートしていこうという意思決定をした形です。

 

クリニックフォアグループでは2023年から、在宅診療・訪問診療を開始しています。

出典:クリニックフォアの在宅診療・訪問診療|CLINIC FOR

 

金子:
それは、村丘先生が元々、総合診療に想いがあったことにも繋がってきますね。

ちなみに新型コロナウイルスの診療を率先して行うことに関して、反対意見などはありましたか?

 

村丘先生:
はい、当時はたくさんありました。それが理由で辞めていった医師やスタッフもいました。ただ、基本的には元々士気の高いスタッフが集まっていたので、皆、よくついてきてくれたなと思います。

ただ、単純にトップダウンでやると言ったから成り立つというものではないので、職員の皆さんには、入念な説明・コミュニケーションとケアを大切にしていました。

コロナ禍の間は、常に国や行政の決定や方針を受けて、オペレーションを更新しながらの医療実践でした。それには良い意味でも悪い意味でも苦労しつつ、皆で乗り越えてきました。

 

金子:
すごいですね。延べ何名くらいPCR検査や新型コロナウイルスの患者さんの診療をしましたか?

 

村丘先生:
数え切れない程ですね。(笑)

いわゆる発熱患者さんに関しては、1院で1日100名は当然で、襲来波が訪れている時は1日200名近く診察していました。

 

金子:
それは、何名の医師で診察をしていたのでしょうか。

 

村丘先生:
基本的には、ドクター2名体制で診察をしていました。

襲来波が来ている時は、ほとんどが発熱患者でした。緊急事態宣言の時などは、朝から晩まで発熱患者さんがたくさん訪れて、一方で、その他の患者さんは減っていた状況でした。

 

金子:
反対派の方もいる中で、常に情報をアップデートしながら、ひとつひとつ丁寧に説明を繰り返して診察を続けてこられたということですね。

 

村丘先生:
そうですね。実際、スタッフの皆さんは本当によくついてきてくれたと思います。

だからこそ、今は日本で1番士気が高くアクティブな診療所というイメージが確立されているのかなと思います。

 

Q7:今後のさらなる挑戦について

金子:
今後さらに挑戦していきたいことはありますか?

 

村丘先生:
そうですね。医療に関しては、訪問診療がしっかり自走するようになって、美容皮膚科などの部門もより持ち上がっていけば、一旦はソフトウェア部分に関しては1つの完成形が見えてくると思っています。

すると、次はハード面での、数やスケールという部分を目指したいです。これまでは、どちらかというと東京都内の都心部を中心に展開してきましたが、今後は日本全国に根付く次世代型医療プラットフォームとして存在感を高めたいと思っています。なので、地方にも同じような形の院を作っていきたいと思います。

例えば、札幌、仙台、名古屋、福岡といった各地方の基幹都市にクリニックフォアがあるようにしたいです。

 

また、原点の目標になりますが、医学研究への還元を行っていきます。

実際に、去年の夏から「クリニックフォア医学研究所」をひっそりと立ち上げておりまして、研究活動を再開しています。

そこから更に一歩を踏み出したり、継続的に研究成果を出していくような段階はこれからですが、適宜アカデミアとタイアップしながら、「臨床で稼いでいるだけの医療機関」というわけではなく、「医学研究や医学の発展にも寄与する学術活動をしている医療機関」という形にしていきたいなと考えています。

 

Q8:クオリティーの統一について

金子:
全て一貫性があり、繋がっているのですね。

次に、現在も貴院は多くの拠点があると思いますが、村丘先生は全ての拠点に顔を出しているのでしょうか。

 

村丘先生:
そうですね。なるべく多くの拠点に顔を出すようにしています。

ただ、どうしても遠方は数が減ってしまう傾向にあり、そのあたりの対策は、今後、考えていきたいです。

 

金子:
多くのスタッフさんの医療に関する想いや質を保つには、村丘先生が細かいところまで目を配らせて、指示を出しているからと感じていますが、常に診療などで行かれている拠点と、なかなか顔を出せていない拠点との間で士気の高さに違いはありますか?

 

村丘先生:
多少はあると思います。その部分は常に課題でもあります。

いくら中央からクオリティコントロールしようとしても、物理的距離が離れているとどうしても伝わりにくく、診療や対応の質が落ちてきてしまうことはあり、先ほどお話しした地方展開に関しても、どこまで都内と同じ質を維持できるかというのは、これからの挑戦になると思います。

 

そのためにも、院長になる先生には、必ず、質の高いベテラン医師の外来にしばらくついてもらって「このスピード感とクオリティーで診療するのがうちのやり方です」と、実感をしてもらっています。「完璧にコピーすることは出来ないかもしれないけれど、これを『北極星』として目指してやってください」と伝えると、しっかりそこを目指して診療をしてくれるようになります。

 

金子:
村丘先生の元で、北極星としてのベースをしっかり学んでから、それぞれの拠点で活躍してもらうということですね。

 

村丘先生:
はい。ただ、医師はそれぞれ、これまでの経験に誇りを持っているので、あまりに多くを伝えすぎても上手くいかないことが多いです。なので、最初に「北極星」をきちんと見せて、その後は干渉し過ぎないスタイルをとるようにしています。

 

金子:
見本を見てイメージを共有するという方法が大切なのですね。

 

村丘先生:
はい。目指すべき「北極星」を共有しないと診療の質は、なかなか上がって来ないです。

本当は高いレベルに達していないのに「このままで良い」と思われてしまうと、ずっと質は上がらないままになってしまいます。

 

金子:
なるほど。クリニックフォアが発展している理由が明確にわかってきました。

 

村丘先生:
ただ、これがいつまで続くのだろうとも思います。(笑)私が老衰する前に、このクオリティーコントロールを引き継げる人材を見出して、引き継いでいかないといけないなと思っています。

 

Q9:これから開業する先生に向けてアドバイス

金子:
最後に、これから開業する先生に向けてアドバイスはありますか?

 

村丘先生:
基本的に、全てを1人で抱え込まずに良い仕事のパートナーを設定することが大切だと思います。それは2人かもしれないし3人かもしれないですが、適切な分業はした方が良いです。

日本の伝統的な開業医というのは、昨日まで臨床しかしていなくて、経営・マーケティング・人事・労務・経理などの業務に対して1ミリも気にかけてこなかった人が、ある日あるときからその全ての業務を一手に引き受けなければならない、、というところから不幸が始まっていると思っています。

 

人はいくら有能であってもその能力や時間は有限ですから、こうなると、全てが中途半端になってしまいます。今お話しした業務の全部をしっかりやろうとすると、実際は5人~10人スタッフがいても足りないくらいなのですから。

 

昔でいう「赤ひげ先生」のように、「とりあえず開業して、平凡に診療していれば、長年生き残れる」という時代ではなくなっています。

自分のリソースが色々なことに分散されてしまうと、「院長自身はずっと忙しいのに、患者さんに提供される医療価値は低い」という状況になります。

 

レセプトに追われ、スタッフが喧嘩したから人事調整もして、、と院長は暇なく永久に仕事に追われて忙しくしているのに、患者さんから見ると「待ち時間は長いし、診療時間も短くて雑、診てくれるのは簡単な風邪くらいで、少し難しくなると高次医療機関に回される。ちょっと忙しいと不機嫌な態度をとられる」というような、評価になってしまうでしょう。実際、そのようなクリニックはたくさん見られます。

 

これは、開業の仕組みが、良くも悪くも医師ひとりの責任にのしかかり過ぎていることが原因です。求められる医療が高度化し、独力で切り盛りするのがなかなか難しい時代にもなってきているので、業務を適切にアウトソーシングし、自分は診療に集中して診療の質をしっかり高く保つ努力をしていけるよう、上手に分業するというのが一番良いと思います。

 

ただ、そのパートナーが裏切りをするような人だったり、医療に対する理解が低すぎる、「ビジネス寄り過ぎるビジネスマン」だったりした場合には、互いの気持ちが離れて組織が瓦解する要因になってしまうリスクをはらんでいます。

医療者側も経営的部分をよく理解するよう努めつつ、一方で、医療に対する理解の深いビジネスパートナーを見つけて開業をすると成功確率が上がるのではないかと思います。

 

金子:
なかなか、良いビジネスパートナーが見つかった状態で開業をされる先生は少ない印象です。バックオフィスは奥様がやられていることもありますね。

 

村丘先生:
奥さんであっても、色々な面で切り盛りができる方であれば問題ないと思います。家族でサポートができるのであれば、裏切りも出にくいので一番良いですよね。

家族や親族で血縁的に裏切る可能性が低い、かつ仕事のパフォーマンスも良いというのであれば、それは理想的なビジネスパートナーだといえます。とにかく、信頼できるパートナーをぜひ見つけてください。

 

金子:
とても勉強になりました。ありがとうございました。

以上

 


クリニックフォアグループ会長 兼 クリニックフォア田町院長

村丘 寛和 Muraoka Hirokazu

経歴:

医師、医学博士、公衆衛生学修士、総合診療医

(総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医)