行政手続き
医療機関の行政手続きについて
Ⅰ.はじめに
医療機関の行政手続きには、保健所、厚生局、都道府県、公費など様々な種類があります。そこで、今回は医療機関の行政手続きにおいて「どの行政機関で、どのような手続きをすべきか」について解説します。
Ⅱ.保健所手続き
まず、保健所の手続きについて解説します。
1 管轄
保健所は、多くは所在する市区町村単位です。中には複数の市町村で1つの保健所の場合もあるので、確認が必要です。「○○市 医療機関開設」などで検索をすると出てきます。
「生活衛生課 医務薬事係」「保健総務課 医事・薬事担当」「生活衛生課 生活衛生係」など部署の名前も様々です。
2 役割
(1)医療機関の情報収集、整理及び活用
・クリニックの開設、廃止、休止など
・医療機関の人員、施設設備、診療機能等に関する情報の収集と管理・分析
(2)地域の保健医療の管理
・地域の保健医療の管理機関として、法令に基づく監視業務等
・地域の医師会や消防機関などの救急医療の関係機関との調整
・保健衛生部門や警察などの関係機関、ボランティアを含む関係団体との調整
など
(3)保健医療の企画、調整の機能の強化
・地域の保健、医療、福祉のシステムの構築、医療機関の機能分担と連携、地域における健康危機管理の拠点としての機能の強化等について企画や調整の推進
<参考資料>医療計画の作成及び推進における保健所の役割について
3 主な手続き
医療機関が行う保健所での主な手続きは、
・医療機関の開設、休止、廃止
・医療従事者の登録
・診察時間や休診日の変更
などがあります。
4 留意点
個人クリニックの場合は、一般的に手続き内容の生じた「後」に手続きを行います。
例えば新規開設の場合、開設前の手続きは出来ない為、あらかじめ手続きに関する相談をしておき、開設した10日後(※自治体に寄りますが、概ね10日後が多いです)までに手続きを行います。
医療法人の場合、開設に関しては、事前に「開設許可申請」が必要な自治体が多いです。申請について事前に相談をし、許可申請を提出します。その後、保健所職員による立ち入り検査が行われ、許可が下りてから開設し、開設届を提出します。
上記のように、個人と法人で手続きの流れが異なりますので、留意が必要です。また、手続きの提出期限についても、市区町村によって異なるので事前に確認しておきましょう。
Ⅲ.厚生局手続き
次に、厚生局の手続きについて解説します。
1 管轄
厚生局の各管轄は各都道府県単位になります。
2 役割
厚生局の役割は以下のようなものがあり、主に「保険診療」に関わることが多いです。
・医薬品、医療機器製造業の許可
・保険医療機関などの指導監査
・健康保険組合の指導監査 等
<参考>関東信越厚生局の役割について
3 主な手続き
厚生局では、主に保険診療に関わる手続きを行います。具体的には、
・保険医の登録
・保険医療機関としての登録(開設)
・施設基準の届出
などの手続きを行います。
4 留意点
新規開設の場合は、保健所で手続きをした後、その開設届の控えを厚生局に提出します。提出期限は、都道府県によって多少異なる為(概ね毎月10日~15日)、締め切り確認が必要となります。この締め切りまでに提出をして、その翌月1日から保険診療の開始となります。
厚生局で手続きを行うと、新規開業してから約半年~1年後に新規個別指導が実施されます。その後も、不定期で個別指導が入ります。
個別指導では、カルテや点数等を開示して、保険診療や診察費の請求が正しいか監査し、指導を行います。特に、単価の高いクリニックは、個別指導に入る回数が多いので留意が必要です。
Ⅳ. 都道府県手続き
ここでは、都道府県手続きの手続きについて解説します。
1 管轄
各都道府県、政令指定都市に関しては、それぞれの自治体に基づいた手続きを実施します。
2 役割
都道府県は、医療機関の中でも医療法人に関する手続きを行います。よって、個人クリニックは、都道府県への手続きは不要です。
3 主な手続き
主に、以下の手続きが発生した場合に、手続きを行います。
・定款変更
・役員変更
・医療法人の新設
・事業報告
など
4 留意点
定款変更や医療法人開設手続きには、時間がかかります。
定款変更の場合は変更事項にも寄りますが、1~3カ月程度、医療法人新設の場合は年に2回の指定の時期に提出して、許可が出るまで6か月ほどかかります。
また、医療法人の新設はしっかりと書類をそろえないと新設許可を得られないこともあり、その場合は次の申請タイミングまで半年ほど待つことになります。
一方で、役員変更は変更が生じてから、原則10日に以内に届け出を行う形となり、特に認可や許可は不要となります。
Ⅴ.公費手続き
公費は、種類によって管轄が分かれています。
例えば、生活保護医療・自立支援医療・労災医療・認定疾病医療・一般疾病医療・結核医療など、手続きによって期日や提出先が異なる為、提出予定の公費の種類を、事前に確認する必要があります。
Ⅵ.依頼する専門家について
上記を含めて、医療機関が行う行政手続きの外注先を一覧にしたものがこちらです。
通常、行政手続きは行政書士に依頼することが多いですが、顧問税理士が行政書士登録をしている場合には、顧問税理士が手続きをしてくれることもあります。
医療法人の場合、行政手続き後に登記を行う際には、司法書士に依頼をします。登記に関しては、行政書士に依頼することは出来ない為、留意が必要です。
Ⅶ.終わりに
ここまで、医療機関の行政手続きについて解説をしました。医療機関の行政手続きは、保健所や厚生局、各都道府県、公費の手続きなど多岐にわたる為、スケジュール管理も重要となります。
計画的に手続きを進める為に、早めに各機関への事前相談を行うことはもちろん、各専門家からのサポートを検討することをお勧めします。
行政手続きに関しては、こちらのコラムもご参考ください
著者:株式会社G.C FACTORY 広報部
日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。
監修:金子 隆一(かねこ りゅういち)
(株)G.C FACTORY 代表取締役
経歴:
国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。
実績・経験:
・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験
・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任
・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任