新規開業、承継開業
「診療所事業の成功のポイント」
目次
Ⅰ.はじめに
前回のコラムで「承継開業と新規開業の選択について」お話しさせていただきました。今回はその中で事業の成功の見通しについて考えるポイントをより詳しく解説をしてまいります。
Ⅱ.収益の上がっていない承継診療所を引継ぎ事業拡大を目指す
最も目につきやすい承継案件は、高売上、高収益の診療所かと思われます。運営がうまくいっているため、多くの患者さんの来院を見込めます。一方でこういった案件は何十年も診療を行ってきているケースが多く、営業権で譲渡対価は高額であるのに、医療機器や内装が古くなっているケースが多いです。逆に、運営がうまくいかず開業後数年で承継される案件は、譲渡対価(営業権)は安く、内装・医療機器は綺麗でそのまま手を入れずに使用することも可能なケースも多くあります。このような診療所のケースで現在運営がうまくいっていない場合でも診療科目や戦略を変更することにより患者さんの来院を見込める場合もございます。(近隣では内科の競合が多く、耳鼻咽喉科に変更したら競合が周りに1件もなかった)現在の患者数だけに捉われることなく、ご検討してみてはいかがでしょうか?
Ⅲ.診療所では無く院長に患者さんが付いていることもある
高収益だからといって診療所を承継したとしても、そのまま患者さんが来院くださるかは注意が必要です。例えば、前院長が近隣の病院と強いパイプを持っている、前院長がテレビにでるような有名人である、前院長しか処置できない特別な診療を行っている、また、前院長が実は近隣で移転を考えており患者さんを引っ張り古い内装や機器を売りつけようとするケースもございます。院長先生の交代によって患者さんが離れたりする要因がないかどうか確認をするべきです。
Ⅳ.廃院情報を確認し近隣で新規開業をする
ご相談いただく先生方、全ての承継先が見つかるわけではありません。譲渡せずに廃止するケースの場合、先生は近隣に患者さんを他へ紹介せざるを得ません。そのため近隣で新規開業を歓迎してくださることもあります。その際はどこまで信頼関係をもって情報をいただけるかですが新規開業でも患者さんの集患は立ちやすくなります。
Ⅴ.自身の現在の勤務先の近くで開業する
難しい場合もありますが、勤務先の病院がパンク状態であり紹介先を探しているような病院の場合、最初から開業することを約束して入職した病院、自身がいなくなった後その診療科を閉じることを検討している病院などでは開業する際に、患者さんに開業することを案内を事前にすることも可能な病院もあります。開業に向けて医薬品のリスト収集や運営ノウハウを聞いてみることで、承継でなくともある程度見通しを立てることも可能です。
開業場所、承継を希望する案件ごとにケースバイケースでございます。案件ごと個別に相談、また、類似しているケースをもとに試算を行うことも可能です。さらに詳しい内容をお聞きになりたい方は お問い合わせ をお待ちしております。
執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)
(株)G.C FACTORY 代表取締役
経歴:
国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。
実績・経験:
・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験
・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任
・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任