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G.C FACTORY編集部

資金調達、補助金

クリニックM&Aにおける資金調達(その2)

1.はじめに

前回、「クリニックM&Aにおける資金調達(その1)」において、M&Aのスキーム毎における調達方法について記載をしました。ご覧いただいていない方は是非とも以下もご参照ください。↓

GCコラム 「クリニックM&Aにおける資金調達(その1)」

 

そして、今回は「調達先」について、流れ、必要資料、留意点などについて記載をします。実際に、M&Aが進み検討をされる際のご参考になれば幸いです。

 

 

Ⅱ.調達の際の選択肢

(1)民間銀行

まずは銀行です。資金調達に際して最初に思い浮かぶのが銀行と思います。本日はその中で、メガバンクと地方銀行に分けて説明をします。

 

①メガバンク系

誰もが知っている3大メガバンク(三菱、三井住友、みずほ)ですが、クリニックの融資は個人、医療法人問わずにあまり積極的ではないです。唯一みずほ銀行は「クリニックアシスト」というサービスを展開しており、最大で1億円まで借りることができます。このクリニックアシストは既に開業している医療機関だけではなく、新規の開業(事業譲渡のM&Aを含む)にも使用することが可能です。ATMが全国に多数あるみずほ銀行がメインバンクになり、利便性が高いのがメリットですが、このクリニックアシストはシャープファイナンス株式会社が保証に入るため、みずほ銀行への金利の他に、このシャープファイナンスへの保証料がかります。

※みずほ銀行 クリニックアシストの詳細

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/finance/others/clinic_assist/index.html

 

②地方銀行系

地方銀行は、厳密には、全国地方銀行協会に加盟している第一地方銀行と、第二地方銀行協会に加盟する第二地方銀行がありますが、この記事では、簡易的にメガバンク以外の各都道府県に本店を有している銀行としてまとめて記載します。(例 横浜銀行、京都銀行、静岡銀行、千葉銀行、池田泉州銀行、福岡銀行、七十七銀行など)

地方銀行の多くは、メガバンクとは異なり小規模の融資も積極的に行っています。医療機関への取り組みへの温度感は銀行に寄って様々ですが、積極的な銀行は金利の面でも他の選択肢よりも好条件であることが多いです。(あくまでも弊社の経験ですが、関東でしたら、横浜銀行、群馬銀行、静岡銀行などは医療機関に積極的です。関西でしたら、池田泉州銀行、京都銀行などが積極的でした。)留意点は当然ですが、融資対象となるエリアに制限があることです。地方銀行は地盤としている都道府県があり、支店が全国にあるわけでは無いです。寄って「○○銀行が良い」と聞いたからと言って、自院の場所が融資の対象になるかは確認が必要です。

ATMや支店の数もメガバンクに比べると少ないです。地方銀行の多くは融資の条件として、診療報酬の振り込み口座への指定(国保、社保)がありますので、近くに支店が無く、利用に不便な場合は、定期的にメガバンクの口座などへの資金移動が必要になります。ただ逆に言えば資金移動をするだけで良いので、支店が近くに無いからと言う理由だけでは、地方銀行を選択肢から外すのはもったいないと思います。今はほとんどネットバンキングですので、支店に行くことは限られます。

また、地方銀行はM&A仲介にも積極的に取り組んでいることが多いです。融資を受けた際に、次の展開を希望される場合は銀行の担当者に「良い案件あったら教えて」と一言伝えておいてはいかがでしょうか。

 

(2)政府系金融機関(政策金融公庫、福祉医療機構)

次に、政府系金融機関についてです。ここでは、政策金融公庫と福祉医療機構について解説をします。政策金融公庫や福祉医療機構の融資のメリットは先に紹介した銀行と組み合わせがしやすいという点です。具体的には、上記の地方銀行のように、その銀行の通帳を作成して、そこに売上を入れるように求められるが無いことです。銀行は融資の際、その銀行の通帳を作成し、支払い基金からの診療報酬の振込先に指定するように求められます。その条件下では、2行~3行から融資を受けることが難しくなり、調整が必要になります。政策金融公庫や福祉医療機構では、その条件が無いため、例えば横浜銀行で1億円、政策金融公庫で3000万円などの調達が可能です。

また、金利面では、弊社の支援先の実績では、政府系金融機関よりも地方銀行の方が低い傾向にありますが、例えば新型コロナウイルスで経営に影響を受けた場合など、一定の条件を満たせば、他の選択肢よりも良い条件の融資もあります。

 

(3)ノンバンク

次はノンバンクです。消費者金融、リース会社、クレジットカード会社などです。金利が高い傾向にあり、医療機関ですと特に困ったケース以外には使用しないことが多いです。ただ、審査期間が短く、急ぎで資金が必要な場合に利用して、銀行などの融資が入ったら返済をするというケースに向いています。M&Aなどでも早期に譲渡契約を締結となった場合などでたまに利用をするケースもあります。

 

(4)その他(知人や親族から借りる場合)

最後に知人や親族から借りる場合です。大変心強い方法ですが、この場合もしっかりと金銭消費貸借契約書を締結し、金額が大きい場合は利息を設定しておく方が無難です。(本来支払うはずの金利部分が贈与とみられないように)この辺りは、実際に税務調査の際に説明をすることになる顧問税理士と相談をすると良いです。また医療法人で、株式会社などの営利企業からの融資や出資を受ける場合は、役員構成や他の取引など留意が必要です。(かなり細かくなるので今回は割愛します。ご検討の際はご遠慮なく弊社にお問い合わせください)

 

Ⅲ.融資審査の際の必要資料

 

融資に際して、準備する資料は以下の様なものです。銀行や状況に寄っても異なってきますが、以下が最低限求められる資料となります。

 

(1)個人開業の場合

 

(2)医療法人で分院開業の場合

 

以上です。

審査はこれらの資料が集まってから3週間ほどかかることが多いです。そして審査が通ってからも事務手続きの時間も1~2週間かかります。M&Aを進める際には、これらの期間を逆算してスケジュール調整を行う必要があります。

 

Ⅳ.まとめ

クリニックM&Aでは、資金調達は大前提となる重要な事項です。早めからの準備が重要であるとともに、「どの主体でどこから借りるのか」という点をM&A仲介者などと綿密に相談することが重要となってきます。

G.C FACTORYでは、資金調達が必要となるM&Aの支援も数多く支援をさせていただいております。M&Aは手持ちの現金で行わないといけない、と決めつけずにご相談をいただければ幸いです。

 

 

 

執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

 

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

 

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任