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G.C FACTORY編集部

クリニックM&Aの基礎

医療機関のM&A「売り手の売上・利益は高い方が良いのか」

 

Ⅰ.はじめに

医療機関M&Aは、営業権+譲渡時の純資産額で算定を行うことが多いです。このとき営業権はその医療機関の利益を元に算出をします。利益は高ければ高いほど良いという印象がありますが、単に「利益が高い」「売上が高い」と言いましても、なぜ売上・利益が高いのかという理由によって、留意点やメリット・デメリットが異なります。

本記事では、売り手の売上・利益が高い場合の各パターンと留意点について解説します。

Ⅱ.パターン毎に考える継承時の留意点

まず、継承時の留意点について、パターン毎に解説します。

1 売り手のお人柄や経営手腕が素晴らしく、患者さんから信頼をされているケース

売り手の先生のお人柄が素晴らしく、経営のノウハウやマネジメント力、マーケティング力に長けているケースです。一見メリットしかないように思いますが、継承後に「利益を出す」という観点において、買い手からすると継承のハードルが高くなることが多いです。

このようなケースにおける分析方法を、いくつかご紹介します。

 

・患者さんの住所分布をみる

評判が良く経営手腕のある先生の場合、近辺の患者さんだけではなく、遠方からわざわざ売り手の先生の診療を受けにきている患者さんが多いケースがあります。

このような患者さんは、継承をきっかけに他のクリニックに移ってしまう可能性があります。その為、住所分布を見て、どこから来院される患者さんが多いのかを事前に確認しておく必要があります。

 

・引継ぎ期間を長めに設定し、売り手にしばらく残留をいただく

人望のある売り手の先生から買い手の先生に継承するにあたり、十分に引継ぎしてもらう期間を設けることが大切です。

継承後も、月1~2回程度は売り手の先生に残留いただき、売り手の先生を目当てとしている患者さんの診療をしてもらうこともあります。そして一定の期間をかけて、少しずつ買い手のクリニックの雰囲気に馴染んでいただくのがお勧めです。

 

・経営方法(休診日、診療時間、マーケティング方法、会議体など)はなるべく変更をしないで継続する

継承の時点で、スタッフや患者さんから信頼を得ている状態のため、経営方法はなるべく変更しないようにしましょう。

具体的には、診療時間や休診日、クリニック名、オペレーション部分については「先生が変わってから、クリニックが変わってしまった」と思われないように継続することをおすすめします。

 

2 売り手の先生が専門性の高いスキルを持っているケース

次に、売り手の先生が、各種検査や手術などの外科処置、又は「○○病なら○○先生」というようなブランドを持っている場合、それを買い手がそのまま引き継げるのであれば問題はないですが、専門が異なるケースの場合は、以下のような注意が必要です。

 

・その疾患や検査の売上を見せていただく

その専門的な処置や検査が、自身は行えない場合は、実績を出していただき、現在の営業権のうち、どれくらいを引き継げるのか確認しましょう。

 

・売り手がその検査や疾患の治療のために非常勤勤務をいただく

売り手の先生の検査を目当てに来ていた患者さんのために、非常勤として残っていただくことも検討しましょう。ただし、売り手の先生に非常勤医として残っていただいた場合にも、任期は数年です。その間に、同じ処置や治療ができる医師の採用を行う必要があります。

 

3 売り手の先生以外の医師やスタッフに患者さんがついているケース

売り手の先生以外の医師やスタッフの評判により、患者さんが増えて、利益が出ているケースがあります。

このようなケースの、留意点は以下の通りです。

 

・その医師やスタッフの継承を前提とした契約とする(キーマン条項を設定する)

ある一定の医師やスタッフにより利益が出ている場合には、その医師やスタッフに一定の期間勤務をいただくことを前提とした条項(キーマン条項)を設定することをおすすめします。

この場合、そのキーマンとなるスタッフが継承後も残っていただけるように、売り手の先生に協力してもらいます。もし、そのスタッフが継承後も勤務をしない場合には、「譲渡価格を下げていただく」「継承を実行しない」などの条件を設定することができます。

 

4 立地が素晴らしく、売上利益が出ているケース

駅直結のクリニックなどです。このケースは、売り手に依存していない売上利益のため、基本的に留意点はありません。

初診率に比べて再診率が低くなっているはずなので、医師が変わってもそのままの業績が見込まれます。

 

5 競合が少なくて、売上利益が出ているケース

4 とは違い、立地ではなく周囲に競合が少なく売上利益がでている場合です。このケースの留意点は以下の通りです。

 

・近隣に開業計画が無いかの確認

継承時に開業計画が無い場合でも、競合が少ない市場であることは、開業コンサルタントの業界ではわかっているエリアです。そのため「いつ競合が出来てもおかしくない状況」であることを念頭に置いて、継承をする必要があります。

 

6 売上は低いが、各種費用を抑えて利益が出ているケース

営業権は高く出ているが、費用を抑えることで利益が出ている場合、各種費用の削減は「正しい経営努力により抑えられているか」の確認が重要となります。具体的には、以下の点の確認が必要です。

 

・給与などが近隣相場とかけ離れていないかの確認

抑えている費用が人件費の場合は注意が必要です。継承後にスタッフ採用をした場合、「既存スタッフよりも新規スタッフの方が、給与が高くなる」という事態が想定されます。

他にも、昔ながら慣習で残業代の切り捨てなどをしていた場合、継承後に買い手が同じような経営を続けることは出来ません。

 

・家賃などが売り手特別価格になっていないかの確認

売り手が長年にわたり、賃貸オーナーと懇意にしており、賃料などが特別価格になっていたりしないかなども確認が必要です。その他にも本来医療機関経営に当然かかってくる費用が売り手が経営するMS法人の負担になっていたりしないかなども確認が必要です。

Ⅲ.終わりに

ここまで、売り手の売上・利益が高い場合の各パターンと留意点について解説しました。

医療機関のM&Aにおいて、利益が出ている状態が望ましいですが、その利益が営業権として譲渡対価に反映される以上、利益が出ている原因までしっかり分析することがお勧めです。そしてその際に、本稿が参考になれば幸いです。

 

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著者:株式会社G.C FACTORY 広報部

日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。

 

 

 

 

監修:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任