G.C FACTORY編集部

クリニックM&A

医療機関を知人に継承する場合の留意点

 

Ⅰ.はじめに

医療機関M&Aの継承には、M&A仲介会社に依頼をして、これまで面識のない第三者を紹介してもらうケースと、元々の知り合い、友人、後輩、売り手のクリニックに勤務している他の先生などの面識のある医師に継承するケースがあります。

本記事では、この医療機関を知人に継承する場合のメリットとデメリット、アドバイザーの活用例について詳しく解説します。

 

Ⅱ.知人に継承する場合のメリット例

ここでは、医療機関を知人や後輩へ継承する場合のメリットを2つご紹介します。

 

1 お互いの診療に対する考えを把握できている点

買い手候補が、売り手の知人や後輩の場合には、今までに一緒に働いたことがある可能性が高く、売り手は買い手が診療に対してどのような考え方をしていて、どのくらい外来を診ていたかなどの力量について、ある程度認識した状態での継承をすることができます。

これは逆もまた然りでして、買い手は売り手が今までにどのような患者さんを、どのような考えで診療していたかなどを理解した状態で、継承の相談をすることができます。

特に、売り手のクリニックで非常勤として働いていた先生に継承する場合は、スタッフとの関係性や患者さんの年齢や疾患なども含めて、お互いに継承後のイメージが湧きやすくなります。

 

2 お互いに不義理をしにくいので成約可能性が高い点

面識のない買い手に継承する場合、複数のクリニックと商談をしており、ネームクリアや内覧の対応をした後で辞退をされてしまうケースや、中には最終契約直前まで進めても、買い手から破談になるケースもあります。
その点、友人や後輩に継承する場合には今まで構築してきた信頼関係があるので、そういった不義理が起きにくく、成約の可能性が高くなるというメリットがあります。

 

Ⅲ. 知人や後輩に継承する場合の留意点

ここでは、知人や後輩に継承する場合の留意点を3点紹介します。

 

1 年長者の売り手に気を遣ってしまう点

買い手のデメリットとして、譲渡時に売り手の先生が引退される場合には、買い手は売り手の先生よりも年齢的に年下であるケースが多いです。また、買い手が売り手のクリニックの非常勤で勤務をしている場合には、現在の雇用主が医療機関を引き継ぐことになります。その為、今までの上下関係から意見をしにくいという点が挙げられます。

 

2 M&Aアドバイザーを入れにくい点

面識のない買い手への継承の場合には、M&A専門のアドバイザーが介入するケースがほとんどです。調整が必要な事柄や心配ごとがあればM&Aアドバイザーに直接伝えて調整します。

一方で、知り合いへの継承の場合、M&A専門のアドバイザーを入れて継承を進める提案がしにくいことがあります。M&Aアドバイザーが入らないために、M&Aの進み方が通常通りにならなかったり、大事な論点が漏れてしまうなどリスクが想定されます。

また、アドバイザーが入ったとしても、売り手の顧問税理士であったりして、売り手に偏ったアドバイスをしてしまったりすることもあります。

 

3 金銭的な面などの交渉がしにくい点

売り手と買い手が親密な関係性であるほど、お金の話を細かくしにくくなります。譲渡対価を決めるのはもちろんですが、譲渡対価を算出するための各詳細資料の依頼など、M&Aを進めていく上でお金が絡む話し合いをする場面は多くあります。

しかし知人や後輩に継承する場合、元々の関係性がある為に金銭的な交渉がしにくいというデメリットがあります。

 

Ⅳ. 知人や後輩が継承する場合における アドバイザー活用法

前述した3つのデメリットを考慮した上で、弊社としては知人や後輩に継承する場合にも専門のアドバイザーを入れることを推奨します。ここでは、アドバイザーの活用方法を2パターン紹介します。

 

1 M&Aアドバイザーをそれぞれが付ける場合

例えば売り手のアドバイザーには顧問税理士が付き、買い手も個別にM&A専門のアドバイザーを依頼します。その場合、交渉は売り手の顧問税理士と買い手のアドバイザーの間で行われる為、双方の意向を擦り合わせた上で進めていくことや、中立的な契約内容で契約書を作成することが可能となります。

この場合、それぞれがアドバイザーを付ける場合の報酬は、それぞれが発注した相手に各自報酬を支払います。

 

2 1人のアドバイザーが仲介をする場合

売り手と買い手の間に1名のM&Aアドバイザーが仲介に入ることもあります。この場合の注意点は、そのアドバイザーにはあくまでも中立的な立場でM&A仲介をしてもらう必要があります。

1人のアドバイザーが仲介をする場合の報酬は、両者が報酬を折半で支払うことが多いですが、報酬の支払い方については、双方で相談して決めることをおすすめします。

 

また、これは1の場合でも言えることですが、売り手と買い手がプライベートや仕事上で顔を合わせる機会があったとしても、「継承に関係する話題は避け、交渉は極力アドバイザーを介して話を進める」ことが重要です。

 

一般的に、M&Aアドバイザーに支払う仲介料は1000万円~2000万円など高額なイメージを持っている方も多いと思います。

M&A仲介料の報酬設定が高額になる理由としては、「マッチング」に価値が置かれている点に加えて、完全成功報酬としているところが多いからです。

1つの案件に対して、多くの時間と労力を有するM&A会社の事業を成立させる為に、どうしても報酬設定が高くなる傾向にあります。

 

一方で、今回のような場合では、既に売り手と買い手のマッチングが行われていることになります。そのため、M&Aのアドバイザーを付けた場合にも依頼は、M&A仲介業務の業務委託のような発注の仕方になりますので、M&A仲介料もコストダウンすることが一般的です。弊社では業務内容にも寄りますが、弊社のM&A最低報酬(500万円)の6割(300万円)から規模と業務内容で調整をさせていただいております。

 

Ⅴ. おわりに

ここまで、医療機関を知人や後輩が継承する場合について解説してきました。

医療機関を知人や後輩に継承する場合のメリットは、お互いの診療に対する考え方や力量がわかっている為ミスマッチを防げるという点にあり、デメリットは金銭が絡む話し合いが増えるために、元々の関係性が壊れてしまうリスクがあるという点を挙げました。売り手と買い手の関係性が壊れるリスクを回避するためにも、アドバイザーを付けることは有効な手段です。

これまでの関係性を保ちながら、双方が気持ち良くスムーズに継承を行えるように、知人や後輩に継承する場合にもM&A専門のアドバイザーを付けてみてはいかがでしょうか。

弊社では、必要な業務量に応じてお見積りを出させていただき、ご支援することが可能です。第三者継承をお考えであれば、是非お気軽にご相談ください。

 

ご相談はこちらから

 

 

著者:株式会社G.C FACTORY 広報部

日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。

 

 

 

 

監修:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任