クリニックM&Aの基礎
地方のクリニックのM&A動向・ニーズは?統計データをもとに考察
目次
Ⅰ. はじめに
時折、「M&Aは都市部の話」「地方でM&Aは難しい」と思い込んでいる方をお見かけしますが、そうとも限りません。今回は、統計データなどを用いて、地方におけるM&A動向や、クリニックM&Aの潜在ニーズを探ります。地方でM&Aを検討中の医師は、ぜひ参考にしてみてください。
Ⅱ. 地域別のM&A件数から地方のM&A動向を探る
M&A仲介を専門とする株式会社ストライクの調査によると、2018年から2020年の3年間の合計M&A件数(全業種)は次の通りです。
結果を見ると、東京都や大阪府など都市部でのM&A件数がずば抜けて多いことがわかります。しかし、都市部に事業者が集中していることを考慮すれば、当然の結果ともいえます。むしろ、さまざまな都道府県でM&Aの実績があることに注目すべきでしょう。
関東や関西近郊だけでなく、10位以内に、福岡県や北海道もランクインしています。また、11位から20位までを見ると、中部地方や中国地方、東北地方でも多くのM&Aが行われていることがわかります。
こちらは一般企業も含めたM&A件数ですが、クリニックにおいても、地方でのM&Aが実際に行われています。インターネットで検索しただけでも、全国あらゆる地域のM&A案件が見つかります。
Ⅲ.クリニック数から地方のM&Aの潜在ニーズを探る
厚生労働省の「令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、一般診療所・歯科診療所の都道府県別の施設数は次の通りです。
一般診療所・歯科診療所ともに東京都に集中していますが、全国を見渡すと、地方にも施設数の多い道府県があるとわかります。
Ⅳ.後継者不在率から地方のM&Aの今後を予測する
帝国データバンクの「全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)」によると、地域別・都道府県別の後継者不在率(全業種)は次の通りです。
地域別で見ると、北海道や中国地方で特に後継者不在率が高いことがわかります。今後、自治体のM&A支援の取り組みが進むに従い、出口戦略としてM&Aを選択する人が増えるとも予測されます。
都道府県別で見ると、最も後継者不在率が高いのは沖縄県の81.2%でした。都道府県ごとに差はあるものの、全国的に後継者の不在に悩む事業者が多いことが見て取れます。
Ⅴ.地方のクリニックM&Aを進める上での着眼点
数字をもとに考察してきましたが、M&A件数が多いから、クリニック数が多いからといって、事業を引き継ぎたいと思える相手が見つかるとは限りません。結局のところ、しかるべきタイミングで、相性のいい売り手・買い手に巡り会えるかどうかがすべてです。
M&Aを選択肢として検討しているなら、早めに情報収集を始め、行動を起こすことが大切です。
M&Aは、専門的な知識が必要とされ、手続きが複雑であることから、M&A仲介会社に依頼することが一般的です。続いて、地方でクリニックのM&Aを検討している方に向けて、M&A仲介会社を選ぶ時の着眼点をお伝えします。
●クリニックのM&A実績があるか
クリニックのM&Aには、一般企業のM&Aとは異なる特徴があります。そのため、M&A仲介会社の中でも、クリニックのM&A実績がある会社を選ぶことが大切です。
クリニックのM&Aを専門としているか、クリニックのM&A実績があるかどうかを質問し、クリニックに関する知識の有無をしっかり確認しましょう。
●地域密着で対応してくれるか
その地域に拠点を置いているかどうかは、必ずしも重要ではありません。しかし、M&Aをするにあたり、地域の特性を踏まえて担当者がしっかり対応してくれるかどうかを見極めることが大切です。地域における売り手・買い手の情報をどのように入手しているのか等、しっかり確認しておきましょう。
●担当者と相性がいいか
いい売り手・買い手に巡り会えるかどうかは、担当者との相性によっても左右されます。経営方針やM&Aの希望条件を深く理解してくれる担当者なら、必然的に、いい売り手・買い手を紹介してくれる可能性が高まります。
そのため、担当者の人間性や相性もしっかりチェックしておきましょう。
Ⅵ.終わりに 地方だからとM&Aを躊躇する必要はない
地域によって、M&Aの実施件数やクリニックの施設数に差があるのは確かです。しかし、後継者の不在に悩むクリニックは全国にたくさんあり、地域ごとに分院展開して事業拡大している医療法人も増えてきていることから、地方だからという理由でM&Aを悲観する理由はまったくありません。
相性のいい売り手・買い手と巡り会うためにも、早めにM&Aについて検討を始め、行動を起こすことが大切です。
株式会社G.C FACTORY コンサルティング事業部