M&A成約事例
M&A成約事例「一都三県、内科、事業譲渡案件」
Ⅰ.はじめに
この度、弊社がご支援をさせていただいた一都三県の事業譲渡の案件がご成約となりました。
そこで、担当者であるM&A仲介コンサルタント金子に本件についてインタビューを行いました。
スケジュール作成から譲渡実行までの詳しい流れや苦労した点、全体を通して勉強になった点についてのインタビューです。これからM&Aを考えている多くの先生のご参考にしていただければ幸いです。
案件概要 | |
---|---|
エリア | 一都三県 |
診療科目 | 内科 |
売り手 | 個人 |
買い手 | 個人 |
譲渡対価 | 1,000万円 |
スキーム | 事業譲渡 |
譲渡契約書締結までの期間 | 2023/5~2023/11(約7ヶ月) |
譲渡契約書締結から譲渡実行までの期間 | 2023/11/9(締結)2024/3/31 約5ヶ月 |
G.C FACTORY 役割 | 仲介 |
Ⅱ. M&A成約までのスケジュール
大項目 | 詳細 | 始期 | 終期 |
売り案件受注 | 売り手様からの相談 機密保持契約書の締結 | 2023年5月 | 2023年5月 |
相手探し | 買い手様候補の探索 | 2023年5月 | 2023年10月 |
買い手様候補からの質問対応・内見 | 2023年10月 | 2023年10月 | |
最終契約譲渡契約 | 契約書作成 締結 | 2023年11月 | 2023年11月 |
クロージング | 譲渡実行 | 2024年3月 | 2024年3月 |
Ⅲ.各工程の詳細についてのインタビュー
1. スケジュール作成に関して
Q1 今回の譲渡スケジュールは、どのように決まりましたか?
金子:
買い手様の現職の退職スケジュールに合わせて決まりました。売り手様は「いつでも良い」と仰っていたため、買い手様が可能な最短スケジュールということで、区切りよく3月末の退職で4月1日からの譲渡というスケジュールになりました。
Q2 他にもスケジュールを決めるにあたって考慮した点はありますか?
金子:
スケジュールに関しては、上記の通り、特段考慮した点はありませんでした。譲渡契約締結からクロージングまでに関しては、今回は個人クリニックだったため、医療法人の定款変更を検討することもなく、可能なスケジュールで契約書を締結して、買い手様が開業できる4月に譲渡実行する形で決まりました。
2. 売り手の受注
Q3 次に、売り手はどういった経緯で受託になったのかを教えてください。
金子:
前職時代から懇意にしているコンサルタントさんからご紹介いただきました。
3. 買い手の探索
Q4 買い手の探索はどのように行いましたか?
金子:
元々別の案件にお問い合わせをくださっており、その案件の面談時にお話をお聞きしていて、本件の方がよりご希望に合っていると思い、帰り道にご提案させていただきました。
Q5 2案件を比較してご提案したということですね。比較する際に、重視したことはありましたか?
金子:
ヒアリングの中での買い手様のご希望ですね。比較した両案件で、継承前の売上に関しては差がありませんでした。お問合せいただいていた1件目の物件は、人通りが少ない住宅地にあり、今回成約した案件は、駅前で人通りが多いエリアでした。買い手様とお話していく中で、今後の売上の伸びしろを重視されているご様子でしたので、ご提案しました。
Q6 なるほど。今回買い手からの問い合わせは、何件くらいありましたか?
金子:
お問合せは3件ありました。実際に内見まで進んだのが2件でした。
Q7 今回、買い手の探索で苦労したことはありますか?
金子:
今回、売り手様は引退に向けて診療を抑えており、売上が縮小傾向でしたので、ノンネームシートでは目立ちにくい案件だったと思います。継承後の売上上昇余地はたくさんありましたが、ノンネームシートには直近の実績が記載されるため、なかなかホームページやメルマガでは買手候補の目につかなかったのは苦労した点です。このような案件は、最終的に、今回の買い手様のように詳細のご要望を伺う中で、個別にご紹介するとうまく進むことが多いです。
今回も継承後の改善余地などを事前にご説明することで、ご成約に繋がりました。
4. トップ面談・内見
Q8 トップ面談・内見では、どういったところを確認されていましたか?
金子:
駅の周りの雰囲気や、時間ごとの人通りを確認されていました。
あとは、同じテナントにどのような物件が入っているのかを確認されていました。内装に関しては、ホームページに掲載されている通りであったのと、コンパクトにまとまっているため、確認はすぐに終わりました。
面談に関しては、開業からの診察時間の変遷や、外来と訪問診療の割合、どのような疾患の患者さんが多いのか、患者数の増減の経緯などを確認されていました。
Q9 トップ面談では、買い手が細かく質問されていたということでしょうか。
金子:
そうですね。あとはトップ面談でのミスマッチを防ぎたかったので、私からもフォローの意味で質問を投げかけて進めていきました。
Q10 トップ面談・内見は、どれくらいの時間がかかりましたか?
金子:
1時間くらいです。
Q11 なるほど。1時間で全ての質問を聞けるように、買い手様も事前に質問をまとめて、金子さんの方でもその質問を時間内に投げかけたのですね。
金子:
はい。あとは売り手様も「誰でも良い」という感じではなかったので、買い手様がどのような診療をしていたのか、どういうキャリアだったのかなども細かく聞いていました。
Q12 お互いに相性を見ながら、擦り合わせながら進めていったということですね。
金子:
そうですね。良い感じで進められたと思います。
5. 意向表明書の提出に関して
Q13 良いトップ面談でしたね。今回、意向表明書の提出は行いましたか?
金子:
はい、提出しました。
Q14 意向表明書の提出はスムーズに進みましたか?
金子:
はい。スムーズに進みました。トップ面談の雰囲気がとてもよく、帰り道で買い手様から「意向表明を出す」と仰ってくださりました。それですぐに準備に取り掛かることができましたので、スムーズに意向表明を提出できました。
6. 譲渡価格の決定
Q15 今回、譲渡価格はどのように決めましたか。
金子:
前任のコンサルタントさんの時に決まった譲渡価格ではなかなか決まらず、私に担当が変わる挨拶の際に、「少し譲渡価格を少し下げてみてはどうか」とご提案させていただきました。
今回、売り手様は賃貸物件だったので、継承が決まらずに廃止となるとスケルトンに戻したりする費用や、医療機器の処分費なども、もったいないと感じていました。
そのため、それらの処分費用を1つ1つ説明して、少し目線を下げましょうかという話になりました。
コンパクトに開業したい先生の場合、借入額を運転資金含めて5000万円以下にしたいと思います。そして、今回のクリニックは、継承後にある程度はリノベーション費用や新規の機械費用もかかってくるのでそういった費用も踏まえて、今回の金額になりました。
Q16 なかなか決まらなかった状況も踏まえて、今回の価格で決まったのですね。
金子:
はい。売り手様も金額にだけ強いこだわりがあったという感じではなく、患者さんとスタッフを引き継いでくださることを重視していました。そういったご意向も踏まえてご提案をして決定しました。
7. 基本合意契約について
Q17 基本合意契約は締結しましたか?
金子:
はい。独占交渉権を付与する目的で、締結しました。
Q18 基本合意契約もスムーズに進みましたか?
金子:
スムーズに進みました。基本合意契約の締結のタイミングで双方が集まり、今後のスケジュールなどを確認する打ち合わせを行いました。
8. 融資について
Q19 買い手の資金調達について教えてください。
金子:
今回、買い手様は銀行融資を受けました。意向表明を提出する前に、弊社から検討をいただくために、損益分岐点などを計算した事業計画を提出しており、その計画をそのまま融資審査に使うことができました。銀行は弊社から、懇意にしている銀行を2行紹介し、買い手様自身の繋がりで紹介された1行の合計3行で審査を行いました。
Q20 融資は、計画を出してからどれくらいの期間で通ったのですか?
金子:
3週間くらいです。条件的にも先生がご満足いく結果となり、スムーズに進みました。
Q21 素晴らしいです。今回、買収監査はしましたか?
金子:
事業譲渡であったことと、譲渡対価も少額であり、買い手様と話し合い、税務、法務、財務などの買収監査は実施しませんでした。現地に行って時間をかけて、資産がしっかりと稼働するかの確認はしました。
Q22 各資産を確認したということですね。
金子:
はい。基本合意締結の流れでそのまま機械の稼働を確認しました。今回は、「資産譲渡」に近い案件でしたので、その資産がしっかりと使えるかを確認しました。
Q23 それは、買い手様のご希望で確認したのですか。
金子:
いえ、私の方から「せっかく集まるので、機械の稼働も確認しましょう」とご提案して進めました。
9. 最終譲渡契約
Q24 最終譲渡契約はスムーズに進みましたか?
金子:
基本合意契約と比べると少し時間はかかりました。一度契約直前まで行ったところで、売り手様から「少し待ってほしい」というお話がありました。ただ、大きなトラブルにはならずに成約になっています。
Q25 売り手様には、何か懸念点があったということでしょうか。
金子:
いえ、懸念というよりは、譲渡資産のリストなどを細かく確認されていました。
また、契約書には「買収後に1カ月以内で故障した場合には売り手様が修理する」という記載があったのですが、かなり古く、簿価も1円のものに対して、故障が生じて修理代を支払うのは違和感があるというご指摘をいただいて、この点は買い手様もご納得くださり修正をしました。
Q26 そうしますと、最終譲渡契約で苦労した点というと、その資産リストの調整が一番でしょうか。
金子:
強いて言えばそうですね。とはいえ、ご要望を明確に教えていただいて、双方でしっかり確認できたので、後になって「聞いてなかった」となるよりは、懸念点を事前にしっかりと詰めるという必要なステップを踏めたと思います。買い手様も「ご納得いくまでご確認ください」というスタンスで居てくださったので、苦労したという印象ではありません。
10. 譲渡実行
Q27 譲渡実行を終えての感想を教えてください。
金子:
双方様がとても柔軟にお考えになってくださり、とてもスムーズに進みました。開業後に買い手様とお会いしたのですが、実績も右肩上がりの点で順調に推移している点も良かったなと感じています。スタッフさんも全員雇用を継続し、患者さんもほとんどがそのまま通院してくださっているそうです。感想としては、そういった点が本当に良かったというのが一番です。
また、売り手様と出会った際に、スタッフさんもとても良い方で、クリニックの内装も綺麗ですし、先生もとても優しく、誠実な方でしたので、買い手様にとってとても良い案件であることを気付けていたのですが、ノンネームシートには、縮小傾向に入っている売上が記載されてしまい、ノンネームシート時点での遡及の難しさを感じました。
Ⅳ. 全体を通して勉強になった点、大変だった点について
Q28 最後に、全体を通して勉強になったことを教えてください。
金子:
今回のような案件の場合、継承にならずに廃業になっている先生もいるのではと思いました。医療機械も古く、部品が廃版になっていて、テナント自体も年数が経っている場合、売り手様のご自身が「これは売れないだろう」と判断してしまう方は多いです。
一方で、開業について知識がある方からすると、こういった案件の価値、例えば立地の視認性やピーク時の売上などを踏まえると、新規開業よりも安い金額で開業できて、患者数が減ってきているとはいえ、最初から患者さんがついているという点は、実はすごくニーズがある案件です。ただ、そういう背景を知らずに廃業になっている案件は多いと思います。
手を加えて磨けば光る案件の磨くポイントを、コンサルタントがしっかりとお伝えして、それを実現できる買い手様と一緒にやっていくと良い形にできるのではないかと思いました。
Ⅴ. 終わりに
今回は事業譲渡案件の成約インタビューを行いました。
弊社には柔軟に対応できるコンサルタントと、マッチングからM&A後の開業支援まで一気通貫で支援する体制が整っております。
今後も、事業譲渡したい方や譲受して開業されたい方、新規で開業されたい方、皆様の挑戦に不可欠な存在になるべく、誠実に想いに寄り添いながらご支援をさせていただきます。
著者:株式会社G.C FACTORY 広報部
日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。
担当コンサルタント
金子 隆一(かねこ りゅういち)
(株)G.C FACTORY 代表取締役
経歴:国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。
実績・経験:
・開業支援(約100件)、医療機関M&A(約80件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験
・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任
・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任