TEL:03-6432-7889

G.C FACTORY編集部

診療科目別

美容皮膚科・美容外科のM&Aのメリットとは?成功のために考慮すべきポイントを解説

I. はじめに

年々、美容医療がより身近になっており、美容皮膚科や美容外科のクリニックにおける新規開業は増加傾向にあります。美容皮膚科・美容外科では、高額な設備投資が必要であり、都心部の駅の近くなどの好立地が求められたり、多額のマーケティングコストがかかったりと、経営リスクは高く、開業に際しての投資予算も高くなる傾向にあります。近年の医療機関全体のM&A増加と、こういった美容皮膚科・美容外科の特徴も相まり、弊社でも美容クリニックのM&Aの問い合わせは増加傾向にあります。

そこで本記事では、美容皮膚科・美容外科のM&Aにおける売り手・買い手双方のメリットと、成功のために考慮すべきポイントについて詳しく解説します。

 

II. 美容皮膚科・美容外科M&Aの売り手側のメリット

まずは、売り手側のメリットです。

 

・内装や機器の処分費

美容皮膚科や美容外科では、処置やカウンセリングの為に、部屋数が多くなったり、内装のデザインにこだわることが多いです。またレーザー機器など高額な機械を購入することも多いです。そのため、売り手側としては、せっかく多額の費用をかけた内装や機械を、解体したり、処分するよりも、M&Aで譲渡をした方が金銭的なメリットが大きいです。

また、リース契約がある場合でも、契約を買い手側に引き継いでもらうことで、解約料や違約金の負担を避けられるというメリットがあります。(引継ぎ可能かは各リース会社への確認が必要です。)

 

・スタッフの雇用継続

美容皮膚科や美容外科の各施術ができる看護師や、各施術の説明ができるカウンセラーや受付スタッフの採用には、時間と労力がかかります。そのため、スタッフに対して、解雇予告手当や退職金を支払って解雇するよりも、買い手に継承をしてもらうことで、双方にメリットが多いです。一般的に「美容皮膚科・美容外科に特化した専門スタッフがいる」という点は、M&Aにおいて大きな強みとなります。

 

・患者さんの引継ぎ

患者さんを引継いで診療を継続できることは、M&Aにおいて重要なポイントです。患者さんにとっても、これまでと同じ環境で安心して治療を継続できるため、信頼関係を維持できます。また、売り手側が大きな金額や労力を投じて行ったマーケティングを通じて集患してきた患者さんは、営業権として評価されるでしょう。

 

また、美容皮膚科・美容外科の場合はコース契約を用意している場合、いきなり廃止をすることは一般的に難しいです。買い手に診療を引き継いでもらうことで患者さんとのトラブルにならずに引退することができます。

 

ご相談はこちらから

 

III. 美容皮膚科・美容外科M&Aの買い手側のメリット

次に買い手側のメリットです。基本的に売り手側と同じ項目となりますが、以下です。

 

・投資が大きくなる美容皮膚科、美容外科の開業リスク低減

美容皮膚科や美容外科では、他の診療科目に比べて、内装に凝ることが多く、建築費用が大きくなる傾向がありますまた、各種レーザーなどの医療機器も新品で一から揃える場合、種類も豊富で1台1000万円を超える機器も多いです。結果、開業の投資で内装と機械で1億円を超えることも多いです。M&Aの場合、多くの場合で、開業に伴う投資額を抑えることができるでしょう。

 

・資金調達のハードルの低減

美容皮膚科・美容外科を開業する際には、銀行からの資金調達が保険診療のクリニックに比べて難しいことが多いです。M&Aでは開業費用を抑えることができますし、元々の売上や利益から事業計画の説明も行いやすく、資金調達のハードルを下げることが可能です。

 

・マーケティングノウハウの獲得

新規開業の場合、WEBマーケティングや看板の設置などの各種施策を一から行う必要があります。しかし、M&Aの場合は、これらのマーケティングノウハウが既に確立されており、HPのドメインやリスティング広告などの運用実績を引き継ぐことができます。

また、「過去に○○のマーケティングを行ったが効果がなかった」といった情報を獲得できることも、M&Aの大きなメリットです。もちろん、売り手と同じ広告だけを行うわけにはいかないケースが多いと思われますが、美容皮膚科や美容外科では、広告宣伝費に多くの費用を投じるため、成功した施策や失敗した施策のノウハウを共有できることは重要なポイントです。

 

関連記事:

  • 医療機関M&A後のマーケティングに関して
  • 医療機関M&Aにおけるマーケティング
  •  

    ・患者さんの引継ぎ

    美容皮膚科や美容外科における集患は、どのクリニックでもマーケティングが活発に行われており、患者さんの獲得には時間と費用がかかります。患者層(年齢や施術内容や単価)の確認は必要ですが、M&Aで開業当初から患者さんを引き継げることはメリットとなります。

     

    ・取引業者の引継ぎ

    卸業者、専門機器会社、化粧品会社などの仕入れについて、自費診療のみで新規開業の場合は新規での契約が難しかったり、時間がかかることがあります。そのため、M&Aで既存の取引業者を引き継ぐことができれば、スムーズに開業を進めることができます。

     

    ご相談はこちらから

     

    IV. 美容皮膚科・美容外科のM&Aで売り手・買い手が考慮すべきポイント

    ここからは、美容皮膚科・美容外科のM&Aで気を付ける点について記載をします。

     

    ・コース契約の処理について

    買い手は、売り手にコース契約に伴う前受収益があるかを確認する必要があります。例えば、脱毛などで5回などのコースを設定しており、前払いで契約している患者さんを引き継ぐ場合、会計上どのように仕訳されているのかを確認することが重要です。
    本来であれば、前受収益として貸借対照表に記載されており、その患者さんの施術を引き継ぐならばその収益分を譲渡対価で相殺する必要があります。しかし、一括で売上計上をしてしまっている場合は、現状の財務状況や残っている回数を詳しく確認する必要があります。

     

    ・経営におけるキーマンの確認

    運営上、特定の医師や看護師にしかできない施術や、日頃患者さんとの契約におけるカウンセリングで重要な役割を果たしているスタッフ、SNSで多数のフォロワーを有しており、集客で重大な役割を担っている「キーマン」が存在するかどうかを確認する必要があります。

    もしキーマンがいなくなってしまうと、オペレーションや集客が停止する恐れがあります。それらを踏まえた、営業権の譲渡対価の評価を行う必要があるので注意が必要です。

     

    ・内装

    買い手の志向に合った内装であるかどうかを確認し、ミスマッチがないようにしましょう。内装はクリニックのイメージや雰囲気に大きく影響を与えるため、買い手の志向との整合性を保つことが重要です。

     

    ・医療機器

    医療機器が故障していないか、保守契約が切れていないかを確認する必要があります。美容医療機器は毎年最新型が登場するため、現在売り手が使用している機械が、何世代も前の機器である場合、交換の部品があるかなどの確認が必要ですし、集客面ではマイナスになる点は踏まえておきましょう。

     

    ・スタッフ

    継承によって大量に退職が発生する可能性がないか、給料の相場が平均から大きくかけ離れていないかを確認する必要があります。また、患者さんの獲得においてインセンティブの設定がある場合、どのような設定で契約されているかもチェックしましょう。

     

    ・福利厚生

    美容皮膚科・美容外科の場合、スタッフに対して、福利厚生として割引で施術を受けられるようにしていることがあります。その割引率や範囲(親族や友人もありなのか)はクリニックによって異なりますので確認が必要です。

     

    ・診療内容

    手術などの専門性の高い診療内容の売上割合を確認しましょう。また、物販に関するオペレーションは問題ないかなども確認が必要です。(医師の面談が無いと処方、販売してはいけない医薬品や化粧品の販売方法)
    診療内容や施術割合を把握することで、買い手が引き継ぐことができるか、残るキーマンとの組み合わせが可能かどうかを確認することができます。

     

    V. おわりに

    美容皮膚科・美容外科のM&Aは、売り手と買い手双方にとって多くのメリットがありますが、考慮すべきポイントを踏まえて検討することが重要です。財務状況やキーマンの存在、診療内容、スタッフの雇用条件など、さまざまな要素を考慮しながら進めることで、成功に近づくことができます。
    弊社では、美容皮膚科・美容外科のM&Aや、M&A後の継承開業に関する豊富な経験を有しています。M&Aをご検討中の先生がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

     

     

    執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)

    (株)G.C FACTORY 代表取締役

    経歴:

    国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

    実績・経験:

    ・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

    ・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

    ・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任