譲受事例
~偶然問い合わせた案件は自宅から5分。
全員残留してくれたスタッフとともに地元函館に貢献する~
昭和ごとう内科 後藤洋平先生 インタビュー
Ⅰ. まえがき
今回は、昭和ごとう内科の院長である、後藤洋平先生にお話を聞きました。昭和ごとう内科は、2023年4月に継承にて開業をした内科・循環器内科・呼吸器内科・消化器内科のクリニックです。
後藤先生は、元々は新規での開業を検討されており、偶然にも、ご自宅の近くであり、かつ後藤先生の育った地元でもある、函館の継承の話に出会って継承開業をされました。本当に滅多にない、運命的な出会いによる継承ですが、前院長とはご専門が異なったりと課題もある中で、それも良い意味で、深く考えすぎずに乗り越えられているのがとても印象的でした。
開業して約1年経った中で、現在のご状況や、継承のやり取りをしていた当時のことをお聞きしました。新規開業と、継承開業で迷われている先生方、是非ともご参考にしてください。
Ⅱ. グループ概要
グループ概要 | |
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院長名 | 後藤洋平(ごとう ようへい)先生 |
クリニック名 | 昭和ごとう内科 |
クリニックHP | https://showa-goto.net/ |
コンセプト | 患者さん一人ひとりに寄り添いながら、質の高い医療を提供いたします |
所在地 | 〒041-0812 北海道函館市昭和3丁目36-11 |
アクセス | 函館バス昭和バス停 駐車場あり |
診療科目 | 内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科 |
Ⅲ. インタビュー
Q1:医師を志した理由ときっかけ
金子:
本日はよろしくお願いいたします。最初に、後藤先生が医師を志したきっかけから教えてください。
後藤先生:
きっかけは学生の頃に通院していた内科の先生が素敵な先生で、とても憧れていたのを覚えています。
金子:
「お世話になっていた先生がきっかけ」というのはとても素敵ですね!
幼少期から医学部を目指して熱心に勉強をされていたのでしょうか。
後藤先生:
「医師になるため」というよりは、当時流行っていたテレビ(『天才たけしの元気が出るテレビ』)で東大を目指す企画があって、それに影響を受けて勉強をしていました。
そして高校3年生の時に、「将来、何になるか」を真剣に考えた時に、元々の医師への憧れもありましたし、医学部は他の学部と異なり、医師という職業に直結しており、明確に将来の自分を思い描けることに魅力を感じて目指すことにしました。
金子:
当時を振り返ってみて、医学部に進んだ選択は正解だったと思いますか?
後藤先生:
そうですね。今、医師の仕事をとても楽しめていますので、この道で良かったなと思います。
金子:
素晴らしいですね。医師の仕事で面白い部分は、具体的にどのようなところでしょうか。
後藤先生:
医師は理系の仕事のようで、結構文系の要素もある点ですね。
元々、私はコミュニケーションが得意な方ではなかったのですが、外来や入院の患者さんとのコミュニケーションを通して「楽しい」と思うようになりました。
患者さんとお話しする中の言葉の端々に、その方の人生の背景を感じることができて、そのことについて考えることに面白みを感じています。
金子:
相手の人柄や背景に触れながら診察をされているのですね。
これは医師になった当初から感じていたのでしょうか。
後藤先生:
いえ、研修医の頃はとてもそんな余裕はありませんでした(笑)
あの頃は、ひたすら診療としての「正解」を求めて仕事をしていた感じです。
金子:
経験を積むにつれて感じられる仕事の魅力なのですね。
ちなみに開業をされてみて、勤務医の頃とは違う面白さはありますか?
後藤先生:
まだ開業をして1年なので、診療以外の部分はわからないことが多いですね。
目の前の「絶対にしなくてはいけないこと」をひたすら必死にこなしています。ですので、まだ開業医として右も左も見えていない状態だと思います。ただ、その一つひとつの新しい業務も結構楽しめていますよ。
Q2:循環器内科を目指した理由
金子:
次に、循環器内科に進もうと思った理由を教えてください。
後藤先生:
当時の指導医の先生がとても熱心にご指導くださったことがきっかけです。
また、循環器内科は、中には手の施しようがない場合もありますが、多くの場合において、患者さんが元気になっていく姿を見ることが出来る診療科なので、そこに大変やりがいを感じていました。
Q3:地元函館での開業について
金子:
後藤先生は、以前は神奈川県などでもご勤務をされていたと思いますが、地元の函館に戻ってこようと思ったきっかけはありますか?
後藤先生:
子どもが大きくなってきたタイミングで、永住の場所を考え始めたことがきっかけです。
両親が函館にいたことも大きいですが、仕事面でも生まれ育った函館で仕事をしたいと考えるようになり、家族で函館に戻りました。
金子:
函館への転居の際は、開業することが前提だったのでしょうか。
後藤先生:
いえ、転居してきた時は開業することは考えていなかったです。
金子:
そうだったのですね。では、開業を考え始めたきっかけはあったのでしょうか。
後藤先生:
せっかくのインタビューで恐縮ですが、行き当たりばったりで、「そろそろ勤務医も疲れてきたな」と思ったことがきっかけでしょうか。(笑)
金子:
いえ、そういう先生方も多くいらっしゃると思うので大変参考になると思います。
最初は継承ではなくて、新規開業を考えていたのでしょうか。
後藤先生:
はい。最初は新規開業を考えていました。開業できる土地を探していて、自宅から通える範囲なら多少距離があっても良いと考え、広いエリアで探していました。
ただ、なかなか良い場所を見つけられず、「新規開業は難しそうだな」と感じ始めていた時に、偶然、今のクリニックに出会いました。
金子:
それは、すごいご縁ですね。今のクリニックはご自宅からどれくらいなのでしょうか。
後藤先生:
今は自宅から大体車で5~10分の距離です。
金子:
そんな継承案件に出会うなんて運命ですね!
継承なので、最初はノンネームシートですよね。所在地は「北海道」としか載っていないはずですが、今のクリニックが継承に出ている情報を事前に入手していたのですか?
後藤先生:
いえ、全く知りませんでした。ネームクリアしてみたところ、たまたま近所で驚きました。とても幸運だったと思います。
※ 待合室の様子。とても綺麗な内装のクリニックです。
Q4:新規開業から継承開業に変更した理由
金子:
先程、「新規開業は難しい」と仰っていましたが、そう感じた理由は何だったのでしょうか。
後藤先生:
一番は、良い場所が無かったことです。「まとまった広い面積があること」、「人通りが多くて、集患に向いていること」、「目立った競合もないこと」などと考えていると、なかなか良い土地は見つかりませんでした。
金子:
確かに、最初から患者さんがいるわけではないので、慎重になりますよね。
土地探しは、不動産会社に依頼をして探していたのですか?
後藤先生:
はい。あとは実際に自分でも歩いたり、車を出して探しに行きました。それでもなかなか良い土地がなかったですね。
金子:
ご自身でも探されたのですね。そして、「新規開業は厳しい」と感じた後に、継承に切り替えたのですね。
後藤先生:
はい、なかなか良い土地が無かった中で、継承も考えるようになり、「近くに良い案件はあるのかな」と漠然と考えていた感じでした。
Q5:継承開業時の不安な点について
金子:
それで最初に地元の案件と出会うのはすごいですね。
ネームクリア後に、継承を進める際に、不安に思った部分はありましたか?
後藤先生:
やはり、前の院長先生のことを信頼している患者さんが多くいらっしゃいますので、「前の先生の方が良かった」と思われしまうことへの不安がありました。
金子:
実際に開業から1年経って、前の院長先生と懇意にされていた患者さんは継続して来院されていますか。
後藤先生:
来てくださっている人もいますが、来なくなってしまった人も結構いると思います。
前の院長先生はご専門が消化器だったので、その領域の患者さんは、私が別の消化器の先生にご紹介した方も結構います。
Q6:継承開業後の経営について
金子:
ちなみに、継承開業をお考えの先生方にとって気になる質問だと思うのですが、前の院長先生の頃と比べて、売上はどうなりましたか?
後藤先生:
前院長先生の頃と比べると減ってはいますが、「半減した」などという訳ではないです。「少し減ったな」という感じです。
金子:
継承後1年の段階で「少し減った」であれば、これから後藤先生の患者さんも増えていきそうですね。
ちなみに、前院長先生とはご専門が違うと思いますが、継承時そこに関する不安はありましたか?
後藤先生:
はい、私は胃カメラが出来ないので、そこの売上減少をどう補うかを課題に思っていました。
金子:
実際に開業した後、その点はどのように補ったのでしょうか。
後藤先生:
新たに、循環器の診療でよく行う、超音波検査が出来る体制を構築しました。そのために臨床検査技師の方の採用もしました。
その方は、検査技師業務以外も柔軟に、看護師さんのサポートもしてくださるので、とても助かっています。
金子:
新規採用を行ったのですね。ちなみに、その他の元々のスタッフさん達は残留されたのですか?
後藤先生:
はい。皆さん継承後も残ってくれています。
金子:
すごいですね。継承開業では、元のスタッフさんたちの退職が伴うこともある中で、皆さん変わらずにご活躍されているのですね。
前院長先生時代から、診察時間、休診日、システムなど、運用方法は変更しましたか?
後藤先生:
いえ、先ほどの超音波検査のために技師さんを雇用した以外は、ほとんど継承前と同じにしています。
ですので、元からいるスタッフからすると、以前と変わったことと言えば、診療内容くらいです。
金子:
それは、意図的に変更しなかったのでしょうか。内心、「ここは変えた方が良いな」と思う点などはありましたか?
後藤先生:
変えたいなと思うことも多少はありましたが、まだわからない部分もありますし、最初の数年は変えずに、このままいきたいなと思っています。
金子:
確かにスタッフさんからするとその方が安心ですね。継承した際、患者さんはどのような反応でしたか?
後藤先生:
少し前から院内で告知などもしていたので、引き続き通ってくださっている患者さんは大きな反応などは無く、「あぁ、院長が変わったのね」くらいの反応でした。
Q7:継承時の引継ぎについて
金子:
大きな反応にならずに良かったです。前院長先生は、継承後も非常勤で残られたのでしょうか。
後藤先生:
いえ、勤務していません。引継ぎの期間もあまり多くは取れませんでした。
ですが、スタッフは全員変わっていなかったので、その部分で安心いただけたと思っています。
金子:
ご支援をしていて、継承開業される際には、お知らせのチラシの配布などの周知活動はされなかったと記憶しています。前院長先生時代に、後藤先生に院長が変更になることはどれくらい前からアナウンスしたのでしょうか。
後藤先生:
1か月前くらいですね。院内の掲示と、診療時に前院長先生よりお伝えいただきました。
また、その中で一度見学をさせていただきました。ただその時も、診察室の中の様子までは拝見できていないです。
金子:
なかなか診察に入るのは大変ですよね。そのような中で、開業初日は何名ほど来院されましたか?
後藤先生:
初日は、36名です。
金子:
やはり、初日の来院数の多さは、新規開業との大きな違いですね。新規開業ですと2~3人ということもありますので。
開業初日から36名の診察は大変でしたか?
後藤先生:
そうですね。リハーサルもあまりできなくて、全てが初めてだったので大変でした。
特に電子カルテの扱い方などには戸惑いました。
金子:
リハーサルなしでの初日は大変でしたね。初めての環境の中で、診察はスムーズに進んだのでしょうか。
後藤先生:
結構、お待たせしてしまったと思います。
初日は大体、受付から会計が終わるまでで、平均して1時間程度でした。
外来に加えて、施設の訪問診療があったのでバタバタでしたね。
金子:
慣れないシステムの中の初日で、36人を診て1時間待ちならばやむを得ないのではないでしょうか。施設への訪問診療はスムーズに引き継げたのでしょうか。
後藤先生:
そうですね。前院長先生も引き継ぎをしてくださり、施設の理事長さんが前職時代から知っている人であったりもしまして、そういったご縁もあってそのまま引き継ぎさせていただきました。
金子:
そのようなことがあったのですね!地元の継承開業ならではですね。
Q8:継承後の設備について
金子:
継承によって体制は変更していないとのことですが、継承後に、設備など買い足したものはありますか?
後藤先生:
先ほどの通り、超音波検査機器だけ買い足しました。
金子:
なるほど。内視鏡など、前院長先生が使用をされていて、後藤先生が使用されない機械はどうされたのでしょうか。
後藤先生:
内視鏡はリースだったので、継承時に契約を止めて返却しています。
金子:
そうなのですね。そういった点もご縁なのか本当スムーズですね。固定資産として残ると、その後どうするか考えなくてはならないところかと存じます。
現在は、前院長先生の時よりも少し売上が落ちているとのことですが、何年後には前院長時代の売上水準に戻る見込みはありそうですか?
後藤先生:
そうですね。もちろんまだわかりませんが、消化器の患者さんが多少減ってしまいましたが、循環器の患者さんなど、新たな患者さんもいらしてくれているので、可能性としては、その見込みはあります。
Q9:継承の交渉時に苦労した点
金子:
次に、継承の交渉時に一番苦労したなと思うことがあれば教えてください。
後藤先生:
不安や苦労は特にありませんでした。
正直、何もわかっていなかったので、金子さんに提案されたことを信じて、お任せしていました。
金子:
そうだったのですね。それはありがとうございます。
実際に継承をした今、振り返ってみて、交渉時に事前に確認しておけば良かったなと思うことなどはありますか?
後藤先生:
難しいですね。実際に継承してからでないとわからないことばかりですし、それは事前に知りようがない情報なので。あまり継承前から深く悩んだり考えたりし過ぎても仕方ないかなと思います。
私の場合は、前院長先生もとても信頼できる方でしたし、それで良かったと思っています。
金子:
なるほど。確かに、継承前に石橋を叩きすぎてしまう先生も多い中で、後藤先生はあまり心配し過ぎず、前院長先生もとてもおおらかで、全体的にとても和やかに継承を進めていかれていた印象です。実際に、外来も訪問診療も順調に継承できているのですね。
後藤先生:
そうですね。訪問診療に関しては、私は元々経験があったわけではなかったので、スタッフからも「本当にやるのですか?」と言われていましたが、そのまま引き継ぎしました。
Q10:継承後のスタッフ様について
金子:
ちなみに、継承された現在も、不明な点などあった際に前院長先生にご連絡をとることはありますか?
後藤先生:
本当に事務的なことで数回程度ですね。運営面でわからないことがあれば、スタッフに聞いています。
金子:
なるほど。スタッフさんが残留してくれたからこそ、わからないことがあっても円滑に業務が回せているのですね。
継承時にスタッフさんが残ってくれたのは良かったと思いますか?
後藤先生:
はい。スタッフがいなかったら崩壊していますよ(笑)非常に感謝しています。
金子:
後藤先生は、経理や労務はどのように行っているのですか?
後藤先生:
継承前からの方法です。ここでもスタッフが活躍してくれていて、経理や労務も担当してくれています。
将来、今担当してくれているスタッフ達が抜けた時が大変と思うので、それまでに少しでも自分でも業務を理解しておきたいと思います。
Q11:これから開業する先生に向けて
金子:
このコラムをご覧いただく人の中には、これから開業を考えている先生も多いと思いますが、後藤先生は新規開業と継承開業のどちらが良かったと思いますか。
後藤先生:
私の場合は、ちょうど、新型コロナウイルスで物価が高騰したり、建築資材が手に入らないなどがあったタイミングでしたし、人材の雇用という面でも今のスタッフに非常に助けてもらっていますので、結果として継承で良かったと思っています。開業医の経済的安定性も崩れつつありますし、新規開業していたらもっと不安があったと思います。
ですが、それは私の場合であって、新規にしても継承にしても、大変なことはありますし、まだどちらもやってやれないことはないのかなとも思います。
金子:
確かに、継承のメリットとして、初日から患者さんが来てくださるので、経営的な安定性は新規よりもあると思います。
その一方で、後藤先生は、オペレーションの事前リハーサルなしで、初日から30名を超える来院があったそうですが、そういった面は継承の大変さではないでしょうか。
後藤先生:
初日などは、「ちょっと代診に来ました」くらいの気持ちでした(笑)
それが毎日続いて、慣れていくというイメージでしょうか。
金子:
すごいですね。継承開業を考えた際に、前院長先生と専門が違うことに不安を持つ先生も多いと思うのですが、後藤先生は不安を感じたことはありますか?
後藤先生:
いえ、元々、消化器内科には興味があって診てきていましたので、特に抵抗を覚えることはありませんでした。消化器内科という分野に苦手意識がなかったことが大きいですね。
Q12:今後取り組んでいきたいこと
金子:
今後、クリニックで取り組んでいきたいと思っていることがあれば教えてください。
後藤先生:
そうですね。電話での問い合わせなどの業務が、事務の職員の時間と労力をかなり奪っていることが見て取れるので、電話の応答システムに変更するなど、デジタル化については常々考えています。なので、今は情報収集中です。
金子:
それは大事なことですね。先生は、ご自身の地元でもある函館で開業をされて良かったなと思いますか?
後藤先生:
はい。続けられる限り、この地で続けていきたいなと思います。
金子:
とても勉強になりました。本日はありがとうございました。
以上
昭和ごとう内科院長 後藤洋平先生
経歴:
2002年 札幌医科大学卒業
神奈川県、福島県での病院勤務を経て、2012年より函館市医師会病院循環器科勤務
2023年 昭和ごとう内科院長