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G.C FACTORY編集部

クリニックM&Aの基礎

医療機関M&Aに伴う医師会とのやり取りについて

 

Ⅰ.はじめに

医療機関をM&Aにて継承をして開業する際に、医師会への加入を検討する先生も多いかと存じます。医師会への加入には、買い手が新規で加入するケースの他に、すでに売り手が医師会に加入しており、それを引き継ぐケースがあります。

今回は、この医師会の加入時の手続きについて詳しく解説します。

 

Ⅱ. 医師会加入時のスケジュールや留意点に関して

まず、売り手が医師会に入っていない場合には、買い手のタイミングで医師会に加入することができます。一般的に加入時には理事との面談を設けている医師会が多いため、3ヵ月前ほどを目安に伝達しておくと余裕を持って進めることができます。

 

一方、継承の場合においては、売り手とのスケジュール調整が必要となります。
一般的には、従業員には医師会よりも先に、継承することを伝える必要があります。さらに、継承したことをホームページにて公開するタイミングや、追加スタッフの募集を採用媒体などにて公開する前には、医師会に伝えなければいけません。

そのため、従業員に伝えるタイミングと採用媒体などを公開するタイミングの間に、医師会に継承を伝えることができるように、売り手と買い手が双方で話し合いをしてスケジュールを決めることが必要です。

Ⅲ. 医師国保の加入について

医師会に加入をすると、医師国保への加入ができるようになります。

個人クリニックとしての開業であれば、大きな問題はないですが、医療法人の譲渡の場合は注意が必要です。まず、売り手が医師国保に入っていない場合、買い手は継承後に医師会に入っても医師国保に加入できないことが多いです。(法人は健康保険の加入が義務となるため)

 

次に、売り手が既に医師国保に入っている場合でも、売り手が医師会を退会して、買い手が新しく医師会に入会するだけでは医師国保に加入できないケースがあります。

継承前に売り手のクリニックで買い手が勤務医として働き、その期間に医師国保に加入をして、継承後もその医師国保を引き継ぐ必要があったりするので、各地域の医師会及び医師国保に問い合わせをして進めるなど、留意が必要です。

Ⅳ. M&Aスキーム別の手続き

1 事業譲渡の場合

事業譲渡において医師会に加入する際には、売り手の医師会の退会手続きと買い手の新規入会の手続きを行います。

事業譲渡の場合、売り手に医師会への説明や紹介などの手助けをしてもらうことは可能ですが、買い手は医師会に「新規入会」することになります。

よって、医師会の入会金も買い手が新たに払うケースがほとんどです。医師会への入会には数百万円程がかかります。これは地域に寄っても大きく変わるため(100万円台の地域もあれば、400万円を超える地域もありました)、事前に確認をして資金計画を組む必要があります。

 

2 法人譲渡の場合

法人譲渡においては、理事長と管理医師の変更手続きとなり、医師会への入会金が不要となることがあります。これもやはり医師会によって決まりが異なるため、事前に確認は必要です。月々の医師会費においては引き続き医療法人側で支払いをします。

Ⅴ. おわりに

ここまで医療機関M&Aに伴う医師会との手続きについて、伝達時の留意点と、スキーム別に必要な手続きについて解説をしました。

地域の健診や予防接種など、医師会に加入していないと実施できないこともあるので、継承する場合には、適切なタイミングで医師会に加入できるよう、売り手と買い手双方での話し合いはもちろん、M&A仲介会社とも相談をしてスケジュールを組むことが大切です。

 

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著者:株式会社G.C FACTORY 広報部

日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。

 

 

 

 

監修:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任