クリニックM&Aの基礎
薬局M&A 成約しやすい案件とは
Ⅰ.はじめに
1974年の診療方針改定によって医薬分業が進んだ結果、院内処方から院外処方の増加と共に、調剤薬局の数も増加しました。
その一方で、近年は調剤報酬方針の改定や調剤薬局の増加、集約化などにより、薬局の経営は年々厳しさを増しています。また、開業薬剤師の年代が高くなってきたことで、年々M&Aを考えている薬剤師も増加傾向にあります。
その為、今後、薬局の継承を考えている場合には、成約しやすい案件の特徴に該当するか否かによって、継承の価格や動き出しが変わってくるかと存じます。
今回は、薬局M&Aにおける成約しやすい案件と、その特徴について解説します。
Ⅱ. 成約しやすい案件の特徴
まず、弊社の過去実績や買い手の希望などを踏まえた上で、成約しやすい案件の特徴について解説します。
1 高収益(技術料が高い)
当然のことながら、売上・利益が出ている案件は人気が高いです。薬局の場合は、原価の高い薬を多く処方することで、高い売上を出しているケースも考えられます。この場合、薬価差益により収益が出ることもありますが、薬の在庫リスク、価格変動などによる、先行きの不透明さが懸念されます。
その為、調剤技術料(調剤基本料+薬剤調整料)が高く、利益が出ている案件については、収益の落ち込みも低いことから、人気が高く成約しやすい傾向にあります。
2 集中率が低い
処方箋の発行元が、特定の医療機関から集中している場合は、買い手からの人気が低くなる傾向にあります。
2022年度の診療報酬改定により「処方箋集中率が85%超の場合、調剤基本料の算定点数が下がる」など、処方箋集中率の高い薬局は、調剤基本料が低くなる設定となりました。
また、処方箋集中率が高くなるほど、門前の医療機関の経営状況に左右されるリスクが高くなるため、薬局M&Aにおいて、処方箋集中率が高い薬局の買収には、少なからずリスクが伴います。
例えば、門前の先生の引退や、ご高齢により急にクリニックを廃止してしまうことがあります。その際、処方箋集中率が高いと営業権が引き継げなくなるケースがある為、集中率が低く、色々なクリニックから処方箋の受付がある薬局の方が、人気が高いです。
3 門前医療機関の休止、廃止リスクの低い薬局
薬局の近隣クリニックの先生が若い場合や、後継者がすでに決まっている、もしくは常勤の医師が多く在籍しているなど、急に門前クリニックが廃止や休止になるリスクの低い、安心感のある案件は人気があります。
4 専門性、特殊性が低い
例えば、訪問専門の薬局で医療用麻薬など重い薬の取扱いが多い場合や、小児用に錠剤を粉砕加工するなど、特殊な対応をしている薬局よりも、一般的な診療内容で固定の患者さんを掴んでいる薬局の方が引継ぎしやすくなります。その為、専門性や特殊性が低い薬局の方が人気です。
5 好立地
薬局M&Aの場合、継承後に薬剤師を追加で採用することが想定されます。ですが、薬剤師は人材不足の傾向にある為、好立地の方が採用時に有利になります。
東京都心や駅近、東京都心以外であれば一都三県、それ以外であれば県庁所在地など、好立地の場合には成約しやすいです。
Ⅲ. 終わりに
ここまで薬局M&Aにおいて、成約しやすい案件の特徴について解説しました。
薬局M&Aの需要は今後も加速することが予想される為、今回挙げた「成約しやすい案件の特徴」に当てはまっていない場合にも、成約できる可能性は比較的高い状況です。そのような点も含めて、薬局M&Aをお考えの際には、まずM&A仲介会社に相談することをお勧めします。
著者:株式会社G.C FACTORY 広報部
日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。
監修:金子 隆一(かねこ りゅういち)
(株)G.C FACTORY 代表取締役
経歴:
国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。
実績・経験:
・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験
・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任
・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任