譲受事例

家庭と両立しながら、医師として最大限に貢献する。私が選んだ「事業承継」という働き方

院長名 横山 美保子 先生先生
クリニック名 横山皮フ科クリニック
クリニックHP https://hiroo-y-hihuka.com/
所在地 〒150-0012 東京都 渋谷区広尾5丁目14−2 広尾KKビル5F
アクセス 日比谷線「広尾駅」2番出口より徒歩1分  
診療科目 一般皮膚科・美容皮膚科

今回は、2025年10月に最終譲渡契約書を締結し、無事に譲受した、横山皮フ科クリニックの吉村智子先生にインタビューをさせていただきました。
吉村先生が大切にしてきたお考え、承継開業を検討したきっかけ、ビジョンなどについてのインタビューです。
これから承継開業を考えている先生方のご参考にしていただければ幸いです。

Q1:医師を志した理由ときっかけについて

髙淵:
本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。はじめに、吉村先生が医師を志したきっかけや理由について教えてください。

吉村先生:
家族に医療従事者がいたこともあり、幼い頃から医療は身近な存在でした。高校生で進路を考えたときに、「将来、長くやりがいを持って続けられる仕事に就きたい」と考えました。医師は、自分の仕事が人の役に立っていることを実感しやすく、生涯を通して学び続けられる仕事だと感じ、この道を選びました。

髙淵:
ご家族に医療が根付いていらっしゃるのですね。数ある診療科の中で、皮膚科を選ばれたのはどのようなきっかけだったのでしょうか。

吉村先生:
実はもともと麻酔科を志望していました。研修医のときも、半年ほど選択の期間をすべて麻酔科に充てていたほどです。目で見て診断し、経験を重ねるほど自分の中に知識が蓄積され、それが次の診療にすぐ生きてくる。その感覚がとても面白かったんです。それで「あ、自分は皮膚科だな」と思いました。

髙淵:
それは何年目ごろのことですか。

吉村先生:
研修医2年目の最後ですね。そこからは皮膚科を中心に学んできました。

髙淵:
勤務された医療機関での経験で、印象に残っていることや思い入れはありますか。

吉村先生:
お世話になった順天堂の皮膚科の先生方が、本当に素敵な方ばかりでした。学術的にはもちろん、とても温かい環境で学ばせていただき、気がついたら皮膚科の世界にどっぷり入っていた、という感じです。研修期間中は、勉強会や学会、カンファレンス、論文、研究など、本当に忙しい毎日でした。当時は大変でしたが、今振り返ると、その一つひとつが現在の診療につながっていると感じます。

髙淵:
大変な中でも、特に印象に残っているエピソードはありますか。

吉村先生:
初めて一人で手術を任されたときのことも、よく覚えています。それまでは先輩や同期、後輩など誰かと一緒に行うことが多かったのですが、そのときは本当に一人でした。摘出物が周囲の組織と癒着していて剥離するのが大変で、緊張しましたが、無我夢中でやりきった経験は今でも印象に残っています。

Q2:開業のきっかけや検討した時期について

髙淵:
勤務医時代を経て、開業を検討されたきっかけや時期についてはいかがでしょうか。

吉村先生:
大学病院で勤務を続ける中で、今後の働き方や家庭との両立について考えるようになったことがきっかけです。
大学病院での仕事には大きなやりがいがありましたが、休日や夜間の業務もありますので長く医師として働き続けることを考えたときに、もう少し自分自身で働き方を調整できる環境も選択肢の一つではないかと思うようになりました。
最初は市中のクリニックで勤務することも考えていましたが、その延長で「自分でクリニックを運営する」という選択肢も視野に入るようになりました。

Q3:事業承継を選んだ理由、このクリニックを選んだ理由について

髙淵:
開業には、新規で一から立ち上げる形と、今回のような承継とがあるかと思います。当初はどちらも並行して探されていたのでしょうか。

吉村先生:
いえ、最初は新規開業を考えていました。事業承継という選択肢は、当初はそれほど具体的には考えていませんでした。
ただ、実際に開業について調べたり物件を見たりする中で、都内はすでに多くのクリニックがありますので、ゼロから新しいクリニックをつくることだけが最善の方法ではないのではないか、と考えるようになりました。
そこで、新規開業だけに絞らず、通勤しやすく、長く無理なく診療を続けられる環境での事業承継も含めて検討するようになりました。

髙淵:
ご自宅から通勤しやすいところをご希望でしたね。実際に何件か候補をご覧になったのですか。

吉村先生:
髙淵さんと一緒に行ったのと、こちらと。物件だけを見に行ったところは他にもありましたが、先生とお会いして具体的に進めたのはその二つですね。

髙淵:
二つご覧になった中で、こちらに決められたのはなぜでしょう。

吉村先生:
最終的にはご縁だったと思います。
実際にクリニックを見て、前院長先生ともお話しする中で、「これ以上自分に合うお話はなかなかないかもしれない」と感じました。
条件だけを比較して決めたというより、ここならこれまでの診療を大切にしながら、自分がやりたい診療も少しずつ加えていけるのではないか、という感覚がありました。

Q4:事業承継のデメリット、新規開業の良い点について

髙淵:
逆に、あえて言葉を選ばずにお伺いしますが、承継でデメリットに感じた点や、新規開業の方が良かったかなと振り返って思うことはありますか。

吉村先生:
総合的には、承継はメリットの方がずっと大きかったと感じています。
すでに地域の方々にクリニックを知っていただいていて、長く通ってくださっている患者さんがいるということは、とても大きな財産です。新規開業と比べると、患者さんに一からクリニックを知っていただくところから始める必要がないという安心感もあります。
一方で、長く通ってくださっているからこそ、「以前はこうだった」というイメージをお持ちの患者さんもいらっしゃいます。診療体制やシステムを変更すると、戸惑われることもあります。

髙淵:
確かに、長く通われている方ならではですね。

吉村先生:
そうですね。ですから、何でも一気に変えるのではなく、これまで大切にされてきたものを尊重しながら、新しいものを少しずつ取り入れていくことが重要だと感じています。
幸い、皆さん新しい体制も好意的に受け取ってくださることが多く、「診療日も増えて嬉しい」と言っていただけることも多いですね。

Q5:事業承継を経て、学びや気づきについて

髙淵:
事業承継を経て、先生ご自身が学ばれたことや気づかれたことがあれば教えてください。

吉村先生:
今回は、前の先生が完全に診療を離れるのではなく、現在も一緒に診察に入ってくださっています。これは私にとっても患者さんにとっても、とても良いことだと感じています。長く通院されている患者さんにとっては、これまで診てくれていた先生が引き続きいてくれるというのは、大きな安心感になります。
私自身も、これまでのクリニックのことや患者さんとの関係について教えていただけますし、何かあれば相談できる方がいるというのは心強いです。
事業承継というと、ある日を境にすべてが新しい院長に切り替わるイメージもありますが、前院長先生のお気持ちや状況が合えば、一定期間一緒に診療するという承継の形も非常に良いと思います。

髙淵:
吉村先生といえば、私生活と診療のバランス、いわゆるワークライフバランスを大切にしたいというのが印象的でした。実際のところ、いかがですか。

吉村先生:
働き方は、かなり変わりました。
診療を続けながら、家庭との時間も以前より確保しやすくなりましたし、どうしても診療に出られない場合には、代診の先生にお願いするなど、自分自身で体制を整えることができます。
勤務医時代は、どうしても出られない事情があっても周囲にお願いすることに申し訳なさを感じることがありました。現在は、責任を持って診療体制を整えることを前提に、自分自身で働き方を設計できるようになったことは大きな変化だと思います。

Q6:今後のビジョンについて

髙淵:
今後のビジョンや将来の展望について、お聞かせいただけますか。

吉村先生:
まずは、新しい体制になったクリニックを地域の皆さんにより知っていただき、安心して通っていただけるクリニックにしていきたいと思っています。
これまで大切にされてきた保険診療をしっかりと引き継ぎながら、患者さんのニーズに応じて診療の選択肢も少しずつ広げていきたいです。
また、将来的には後輩の医師が学べる場所にもできたらと思っています。
大学病院では保険診療について非常に多くのことを学べます。一方で、美容診療について体系的に学べる機会はまだそれほど多くありません。
保険診療をきちんと行う皮膚科医が、その延長として美容診療についても学べる。そうした場所の一つにしていけたらいいなと思っています。

Q7:新規開業、承継開業される先生へのアドバイス

髙淵:
最後に、これから新規開業・承継開業をされる先生へのアドバイスをお願いします。

吉村先生:
開業の形に正解はないと思います。新規開業が合う先生もいれば、承継が合う先生もいると思います。
私の場合は、すでに地域に根づいているクリニックを引き継ぎ、さらに前院長先生にも診療を続けていただけたことが、とても大きな支えになりました。
承継の場合は、設備や患者さんだけでなく、そのクリニックが長い時間をかけて築いてきた信頼や関係性も引き継ぐことになります。
それを大切にしながら、自分らしい診療を少しずつ加えていく。そのような開業の形もあるということを、これから開業を考える先生方に知っていただけたらと思います。

髙淵:
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

終わりに(コンサルタントのコメント)

承継のお話をいただいてから実際のお引き継ぎまで、およそ4ヶ月。ほぼすべての手続きを一気に進めなければならない、非常にタイトなスケジュールでした。それでもここまでトントン拍子に、そしてスムーズに運んだのは、吉村先生ご自身が一つひとつの手続きを丁寧に管理し、進捗を的確に把握されていたからこそだと感じております。伴走させていただく中で、こちらが何度も助けられました。前院長先生と手を携えながら、地域の患者様と長年勤められたスタッフの想いを大切に引き継いでいかれる吉村先生の姿勢に、承継の一つの理想的な形を見せていただいたように思います。ご家庭との両立を大切にしながら、皮膚科・美容の両面で診療の幅を広げていこうとされるお姿は、これから開業を志す先生方にとっても、大きな道しるべになるはずです。皆様のご協力のおかげで、円満なスタートに携わらせていただけたことを、心より光栄に存じます。今後とも、吉村先生とクリニックのますますのご発展を、末永くお支えしてまいります。




担当コンサルタント:髙淵 信行(たかぶち のぶゆき)
株式会社G.C FACTORY コンサルティング事業部 コンサルタント

経歴:
国内医療機器メーカー、医師紹介会社、医療系コンサルティング会社を経て、(株)G.C FACTORY 創業第一期メンバーに至る。医療系M&A・新規開業支援業務では、60件以上の成約実績がある。

資格
事業承継・M&Aシニアエキスパート