G.C FACTORY編集部

クリニックM&A

医療機関M&Aの基礎④「意向表明とは?流れと留意点」

 

 

Ⅰ.はじめに

売り手と買い手が面談するトップ面談が終わり、買い手が継承の希望がある場合は、買い手から売り手に対し書面を通して意向表明を提出します。

本記事では、その意向表明の提出のタイミングや、記載事項からその留意点について詳しく解説します。

 

Ⅱ.意向表明を出す場合、出さない場合

1 意向表明を出す場合

意向表明は、買い手の継承の意向を売り手に伝えることが目的となります。特に、1つの案件に対して買い手候補が複数名いた場合は、期日を決めて意向表明を提出してもらうケースが多いです。

M&Aでは、一般的にトップ面談を終えて、次のステップが基本合意契約です。基本合意契約では、買い手に独占交渉権が付与されます。トップ面談の際に買い手候補が複数いた場合、売り手がどの買い手に独占交渉権を付与しようか比較検討する為に、買い手に書面で意向表明を出してもらいます。

 

2 意向表明を出さない場合

一方で、1つの売り案件に対して買い手候補が1人の場合は、売り手が提出を望んだり、買い手が概要書などで提示されている条件から交渉をしたい場合などは、意向表明を出すことになりますが、売り手の方で買い手候補を絞る必要性が無いので、そのまま基本合意契約に進み、その中で条件交渉をするということも可能です。

 

Ⅲ. 意向表明書の記載事項・留意点

意向表明の目的は、買い手に希望条件を提示してもらい、売り手に基本合意に進んでもらう候補者を選んでもらうことなので、買い手の希望条件などを詳細に記載します。主な記載事項と留意点は以下の通りです。

 

1 譲渡価格

現時点で考えている譲渡価格を記載します。

売り手がすでに提示している価格に対して、値下げ交渉の意向があればその譲渡価格を記載します。逆に、複数名買い手候補がいる場合には、他の買い手候補と比較して有利となるように、価格を上乗せして書くこともあります。

 

2 スキーム

医療法人の場合、出資持分がありかなしかでスキームが異なります。

具体的には、出資持分ありの場合に出資持分を譲渡とするのか、出資持分の払戻し請求をするのか、もしくは退職金を払って譲渡するのかなどです。その方法によって、それぞれのスキームが異なり、買い手と売り手の税額も変わってきます。その為、意向表明書には買い手が望んでいるスキームも記載します。

 

3 継承への想い、目的

今回の案件の継承を希望する目的や理由を、買い手の想いと共に詳細に記載します。売り手の中には、単に譲渡対価を払えば良いとはならず、しっかりと想いと責任を持って継承してくれることを望んでいる方が非常に多いです。

 

4 買収後の体制

現時点で想定している体制を記載します。例えば、診療科目は引き継ぐのか、自分が院長として診療するのか他の先生に任せるのか、診療時間や休診日はどうするかなどです。

 

5 従業員の処遇

雇用条件を継承するのか否かを記載します。例えば、雇用条件をそのまま引き継ぎたいのか、原則退職なのか、もしくは全員と面談をして合否を決めたいなど、想定している処遇について記載します。

 

6 売り手の継続勤務

売り手の先生に引き続き勤務をしてもらいたい場合は記載をします。また、常勤としてなのか、非常勤医としてなのかの勤務形態について、非常勤の場合どれくらいの日数の勤務を想定しているかなどを記載します。

 

7 資金調達方法

自己資金なのか、銀行からの融資なのか、どのような方法で資金調達をする予定なのかを記載します。

 

8 スケジュール

買収の希望スケジュール案を記載します。

医局の退職や現在の勤め先の退職、ご家族の都合を考慮して、いつなら買収できるのかを明記します。買い手の希望スケジュールを記載することで、売り手はスケジュールも非常に重視をしている人が多く、「譲渡価格は良いが、スケジュールが2年先になってしまうと厳しい」など比較検討がしやすくなります。

 

9 一般的な補足内容

契約書などと混同しないように、法的拘束力を持たない旨の記載などを記載します。

また、上記以外にも、売り手にアピールできる内容や、買い手の希望(独占交渉は〇ヵ月欲しい、一度見学をしたい、○○の資料を用意して欲しいなど)も記載しておくと良いでしょう。

 

Ⅳ. 終わりに

意向表明書は、法律などで書式やフォーマットが決まっているものではありません。

しかし、買い手から売り手に対して、買収に対する熱意や、他に買い手候補がいる場合には、より有利な条件を伝えることができるタイミングでもあります。

意向表明書は、相手に送る手紙のように、買い手の買収への想いをしたためて作成することがポイントです。その際には、内容に漏れがないかなどの確認も兼ねて、専門のコンサルタントと相談しながら作成することをおすすめします。

弊社には、経験豊富なコンサルタントが多数在籍しております。M&Aをお考えの方は、是非お気軽にご相談ください。

 

ご相談はこちらから

 

 

著者:株式会社G.C FACTORY 広報部

日々、医療機関経営の経営に関するコラムを執筆したり、院長先生へのインタビューを実施。
大手医療法人の理事長秘書、看護師、医学生、大手メディアのライターなど、
様々な背景を持つメンバーで構成しています。

 

 

 

 

監修:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任